箱根・思い出のアート 5(旅行 連載小説 短編)

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遅い昼食

ソウタとリサは再び登山鉄道に乗って箱根湯本まで戻ることにしました。電車内では時折楽しいアナウンスが入るのですが、電車の中でソウタの隣に座ったリサはいつの間にかソウタにもたれて眠ってしまいました。
(たくさん歩いたからちょっとくたびれたのかな?)
ソウタは肩でリサのぬくもりを感じました。しばらくじっとそのままにしておきました。

電車が止まる数分前からは乗り換え案内と箱根湯本の案内アナウンスが入りました。さわやかな感じです。到着寸前のアナウンスが聞こえてきました。

「・・・ええ皆さまこれから先もどうぞお気をつけてお出かけまたお帰りください。最後とはなりましたが、皆さま降りるまでが登山電車の旅でございます。あわてて急いで降りても何にも良いことはございません。こういうときには仲良く順番に譲り合いの精神でお降りいただきますようお願いをいたします。またのご乗車心からお待ちしております。終点です。」

アナウンスの途中で乗客が一斉に笑ったときにリサは目を覚ましました。

「あっ、ごめん、私寝ちゃったね・・・。」

「いいよ。ちょっと疲れちゃったかな?」

「うん。ちょっと。ソウタは平気?」

「ああ、僕は大丈夫。見た目よりもタフなんだってさ。」

「それならいいけど(笑)」

「さあ、降りようか。」

「うん。」

 

箱根湯本駅を出た二人は駅の周辺でご飯を食べることが出来そうなお店を探します。もう夕方だったのでお昼と言うよりはむしろ早い晩ごはんという感じです。何軒か探してみて、結局、和食を食べさせてくれるお店を選びました。

「ここは僕がご馳走するからね!」

「本当?じゃ甘えちゃおうかな!」

二人は少しだけ高価な、とてもおいしい和食を食べることができました。魚は刺身も焼き魚も新鮮で二人の口に良く合いました。

「おいしいお魚を食べることができて良かったわ。ありがとう!」

「どういたしまして!」

店を出ると二人は箱根湯本駅でコインロッカーに預けていた荷物を取り出しました。リサは辛そうだったのでソウタは二人分のバッグと二冊のスケッチブックを持ちました。

「ごめんね、みんな持たせちゃって・・・。」

「気にしないで!力仕事は僕に任せてよ!」

箱根湯本の宿にチェックイン

10分ほど歩いて宿に着きました。

「チェックインをお願いします。」

「はい、ああ、午前中に宿泊カードを書いてくださったお客様ですね。」

「はい、よろしくお願いします。」

「えーと 江洲木 ソウタ さまですね!」

「はい、そうです。」

「お連れ様は 黒木井 リサ さまですね。」

「はい。よろしくお願いします。」

「それでは、こちらがお部屋の鍵です。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。この鍵は外出する際にはフロントにお預けください。」

「はい。」

部屋に入るとそこは和室でした。

「和室はいいねえ。」

「なんだか落ち着くわね。」

「わあ、露天風呂が付いているね。」

「へえ。すごいね。」

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「少し休んだら近くのコンビニに行く?」

「夜食とおやつの買い出し?」

「そう!」

「うん、私、チョコが欲しいな。」

「じゃあ行こうか?」

「うん!」

二人はしばらく部屋で休んでから宿を出て徒歩5分ほどのところにあるコンビニエンスストアに行きました。外はすっかり暗くなり、ひんやりしています。

「ちょっと寒いね、平気?」

「平気よ。」

「これ羽織ってね。」

ソウタは自分のジャケットを脱いで、リサの肩に掛けて羽織らせました。

「5分位だからちょっと我慢してね。」

「うん、ありがとう!暖かいわ。」

ソウタの言う通り、ほぼ5分でコンビニエンスストアに着きました。店内は外よりは暖かくて二人ともほっとしました。コンビニエンスストアの造りは東京も箱根もそれほど差がありません。いつもの買い物と同じような気分で買い物できます。

リサが希望したチョコレートの他、お菓子、炭酸飲料、おにぎり、サラダなどを買い求めました。

「コンビニはやっぱり便利だね!」

帰り道を歩きながらソウタが感慨深げに言います。

「そうね、コンビニエンスは便利っていう意味だもんね。」

「そうだね、その便利さは一人暮らしには必需品だよね。」

「そうだよね。」

「でもね、本当は旅の夕食は宿で摂ったほうがいいんだよね。今日はごめんね。」

「いいのよ、気にしないで。さっきごちそうしてもらったし、とてもおいしかったわ。それに、お夜食で食べるおにぎりもちょっと楽しみかな? だから本当に平気なのよ。気にしてくれてありがとうね!」

「そう言ってくれると助かるけど・・・。」

「あっ、そうだ! 私ゲーム持ってきたんだよ、お部屋で一緒に遊びましょうよ!」

「うんいいよ。面白そうだね!」

二人は部屋に戻りました。

「ジャケット貸してくれてありがとうね。とっても暖かかったわ。」

「どういたしまして!」

「じゃあ、さっそくゲームする?」

「うん、それ、どんなの? 僕は今の電子的なゲームにはついていけてないんだけど・・・。」

リサはバッグからゲームを取り出します。

「心配ご無用、ジャーン! ボードゲームだよ!」

「ああ、それなつかしいね、ゲームの駒は表が白で裏が黒。同じ色の駒ではさむとはさまれた違う色の駒はひっくり返されてしまうっていうのだよね。」

「そう、これ旅行用なんだって、小さいでしょ?」

「うん小さいね、これならどこにでも持って行くことができるよね。」

「ええ、電池もいらないのよ。充電もいらない。」

「アナログなゲームなんだよね。でも僕はこれ好きだよ。」

「私も好き!」

「デザインもシンプルで芸術的でもあるんだよね。」

「そう、とても抽象的なね、そして何よりルールが明快よね。白か黒かって案外デジタル的でもあるのよね。」

「奥が深いね。」

「もともと二人用のゲームなので二人だけでも十分に楽しめるのよ!」

「よ~し!負けないぞ!」

「私も!」

二人はボードゲームを始めました。

(つづく)

良い旅を!

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