箱根・思い出のアート 10(旅行 連載小説 短編)

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エピローグ

ソウタとリサが箱根から帰ってきて、もう一年半の月日が流れました。ソウタは大学を卒業した後、ふるさとの実家に帰り、東京のリサも今年大学を卒業しました。二人は地道に遠距離恋愛を続けました。

再び新宿御苑にて

東京は初夏になりました。リサは新宿御苑でスケッチをしています。ソウタがリサに近づきます。そしてリサに声をかけました。

「楽しそうに描いていらっしゃいますね。」

「そうですか?」

「素敵な絵ですね。正確で力強い。」

「ありがとうございます。」

リサは笑顔で受け答えをしました。

「ソウタと初めてここで出会った時とそっくり同じセリフね。」

「そうだね、この後二人とも同じ大学に通っていることが判って意気投合したんだったよね。」

「そうそう、そうだったわ。」

「久しぶり!元気だった?」

「ええ、とっても。でもね、ご存知のとおり就職が上手くいかなくてね。就職浪人中の暇で素敵な女子がここにいるというわけ(笑)」

「そうだと思ってスカウトにきましたよ。」

ソウタは名刺を差し出します。

名刺には『江洲木レンズ工業 東京営業所 所長 江洲木ソウタ』と書いてあります。

「所長の江洲木ソウタと申します。」

「すごいね所長さんになったの?」

「まあね、一年間、全く縁故のない会社で修業したというだけなんだけど、父から東京営業所を立ち上げるように言われてしまってね。経営は素人だからこれから集めるスタッフのみんなに助けてもらいながら東京営業所を作り上げることになったんだよ。」

「そうなんだあ。すごいねえ!」

「ありがとう。東京営業所はレンズ製品の営業と並行して新規事業としてデザイン関係の仕事もしていこうということになっているんだよ。ついてはもしリサが良ければデザイナーとして参加して欲しいなあと思うんだけどどうかな?」

「デザインかあ、いいねえ、私やってみたいなあ。それでどんなものをデザインするの?」

「売れるデザインならなんでもいいよ。」

「それって意外と難しそうだよね。」

「まあだんだんにね、イノベーション事業なので時間をかけて模索していけばいいんだよ。」

「私でいいならぜひお願いしたいわ。家にいても肩身が狭いから・・・。」

「じゃあ決まり、来週から頑張ろうね!」

「はい、よろしくおねがいします!」

「それからもう一つお願いがあるんだけどいいかな?」

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「どんなお願いですか?」

少し姿勢を正してソウタは言いました。

「僕と結婚してください!」

急なことだったのでリサは少しだけ驚きました。そして答えました。

「はいっ。」

「ありがとう。一緒に幸せになろうね。」

「うんっ。ソウタと幸せになるよ。」

「今度一緒に婚約指輪を見に行こうね!」

「そうね、そうしましょう。」

祝福するようにそこにいたハト達が舞い上がりました。ソウタとリサは晴れ晴れとした気持ちでハト達を見上げました。太陽の光がまばゆく、二人はとてもまぶしそうでした。

(了)

あとがき

今回は国内旅行を題材にしてみました。海外も国内も旅の面白さは同じです。箱根は30年ほど前に行ったことがありますが、私が見た場所は彫刻専門の美術館と箱根の関所でした。それらもきっと少しずつ変わっている部分があるかと思います。それに箱根湯本にはまったく立ち寄っていません。そのため、旅行の内容や現地の様子については基本的にインターネットの情報を確認しながら書いています。ストーリーは創作です。都合の良い展開の連続ですが、物語の中くらいは皆ハッピーであって欲しいものです。というわけでこのお話もフィクションなのですが、お楽しみいただければ幸いです。

旅行に関する文章を書いていると自分も現地のおいしいものを食べたくなってしまいます。温泉卵っておいしいですよね。半熟も固ゆでも、筆者の場合はどちらも好みです。皆様はどちらがお好きですか? 文中に登場した半熟の黒い温泉卵は実際に箱根湯本で購入できるようです。この黒い卵は温泉成分が殻についているので触れると手が黒くなるそうです。本当に手に黒く付くのかどうか?そこまで含めて体験してみたいものです。
また、大涌谷には固ゆでの黒い温泉卵があるそうです。立ち入り禁止の影響で入手できなかった時期もあったようですが、この文章を書いた時点では店舗によっては購入可能になっているようでした。いつか食べに行きたいものです。その場で食べるのが良いらしいです。

もしも、この文章をお読みいただいた後で、「箱根に行ってみたいなあ。」とか「旅行に行ってみたいなあ。」と思っていただけたら嬉しいです。

実際にご旅行に行かれる方は事前に正しい情報をよくご確認の上お出かけください。
この文章の中でソウタとリサは良く調べておかなかったために少し損をしています(笑)

良い旅を!

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