みちのく・弘前にて 2(旅行連載小説 短編)

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交番にて

サキと女の子は駅前の交番に着きました。

「こんにずは!」(こんにちは!)
「何んぼされますたぁか?」(どうされましたか?)
「ん。迷子きゃ。」(はい、迷子のようなのです。)
「せば、ねまれ。」(では、こちらにおかけください。)
「ん。」(はい。)
「わらし、名前は?」(おじょうちゃんお名前は?)
「ミホばな。」(ミホだよ。)
「ミホちゃんじゃきゃ。」(みほちゃんですね。)
「かっちゃと来たのかの?」(おかあさんと来たのかな?)
「んだ。」(うん。)
「このわらしばどこで見つけますたぁーだな?」(この子をどこで見つけましたか?)
「駅前の歩道じゃ。」(駅前の歩道です。)
「では、こちきやへ記入ばたのむっきゃ。」(ではこちらへ記入をお願いします。)
「私のごどば書けばいいはんですだな?」(私のことを書けばいいのですか?)
「んだ。たのむっっきゃ。」(はい。お願いします。)
「んだ。」(分かりました。)
サキは自分の住所氏名などを記入しました。
記入し終わったころ一人の女性が慌てて交番に入ってきました。
「こんにずは!お巡りさん!私のめらしば迷わらしサ してしまじょいした。」(こんにちは、お巡りさん!私の娘を迷子にしてしまいました。)
「迷わらしだが? もだばっててこのお嬢ちゃんだが?」(迷子ですか? もしかしてこのお嬢ちゃんですか?)
「あっ、んだんじ!んだんじ!ミホ!こさいたのきゃ!良がた!」(あっ、そうです!そうです!ミホ!ここにいたのね!良かった!)
「おが!」(お母さん!)
「ミホちゃん おがサ会えて良がたきゃ。」(ミホちゃんお母さんに会えて良かったね。)
「こちきやが交番まで連れてきてけだんじゃし。」(こちらが交番まで連れてきてくれたんですよ。)
「何んぼもありがどーごしござじょいした。」(どうもありがとうございました。)
「いえ、何んぼいたしまして。」(いえ、どういたしまして。)
「あれ?サキさんでえぱだが?」(あれ?もしかしてサキさん?)
「あっ!カシスさんでえぱだが?」(あっ!カシスさんですか?)
「高校卒業以来だきゃ。」(高校卒業以来だね。)
「んだっきゃ。」(そうだね。)
「のつかしいきゃ。」(なつかしいね。)
「んだ。のつかしいきゃ。」(うん。なつかしいね。)
二人はしばらく昔話に花が咲きました。
「あのう。悪りんだげれど、こご交番じゃはんで、続きは喫茶店かんどこかでお話されたほうがしいはんではねべさだな?」(あのう。悪いんだけれど、ここ交番ですので、続きは喫茶店かどこかでお話されたほうがよいのではないでしょうか?)
そう交番のお巡りさんに言われてしまいました。
「かんに。んだします。ありがどーごしござじょいした。」(ごめんなさい。そうします。ありがとうございました。)
「喫茶店サあべ!」(喫茶店に行きましょう!)
「んだするべし。」(そうしましょう。)

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サキとカシスはミホちゃんを連れて交番を出ました。駅前の喫茶店に入りました。
お互いに今までのことを話しました。
青森カシスと津軽サキは同じ高校の同級生でした。
カシスの話によるとカシスは高校卒業後、付き合っていた彼氏とすぐに結婚。男の子を一人と女の子を一人授かりました。今日は男の子は保育園に行っています。小さいミホちゃんだけを連れて買い物に来たのですがその最中にはぐれてしまったのだそうです。普段は短時間ですが2トントラックにミホちゃんを乗せて配送の仕事もしているそうです。サキはカシスがたくましいなあと思いました。
サキは今までのことを正直に話そうかなとも思ったのですが、なぜか正直に言えませんでした。アパレル会社で活躍していること、素敵な彼氏ができたこと、経済的にも豊かなことなどを話しました。(私、何、嘘ばっかり言ってるんだろう?見栄を張っても意味がないのに・・・。)
カシスはサキに
「私サはよぐわかきやねばって、サキはサキのりサ いろいろ頑張ってきたんだっきゃ。だばきゃ無理しのぐていいんだし。ありのままでいいんだし。」(私にはよくわからないけど、サキはサキなりにいろいろ頑張ってきたんだよね。でもね無理しなくていいんだよ。ありのままでいいんだよ。)
と言ってはげましてくれました。さらにカシスは言いました。
「それサ、大丈てで!サキはきっど幸せサのれらし。人生サ必要ののは希望ばたなぐごどだり。うちのおばあちゃんが言ってたし。」(それに、大丈夫!サキはきっと幸せになれるよ。人生に必要なのは希望を持つことだって。うちのおばあちゃんが言ってたよ。)
サキは口ごもってしまいました。
「めやぐしたな難しいごど言っちゃったかの?」(ごめん難しいこと言っちゃったかな?)
「うんだ。そしたらごどねわ。ありがどーごし!」(ううん。そんなことないわ。ありがとう!)
「へば、そろそろ行ぐきゃ!またきゃ!」(それじゃあ、そろそろ行くね!またね!)
「んだ、またきゃ!」(うん、またね!)
そしてサキはまた一人になりました。

(つづく)

良い旅を!

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※ 会話の部分は津軽の言葉で書こうとしたのですが、なかなか難しいです。様々なサイトのお世話になり、ようやく文章にしました。もしも、ここに記した津軽弁のニュアンスや言い回しがおかしい場合は正しく教えていただければそのように書き直して参りたいと思います。コメント欄かメールでお送りいただければ幸いです。この後数話は、弘前を中心にお話を創って参りたいと思います。