みちのく・弘前にて 3(旅行連載小説 短編)

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バスに乗る

サキは喫茶店を出るとバス停のある場所へ移動することにしました。おだやかな日差しが心地よいです。駅前のバスターミナルで実家のある町へ向かうバスに乗りました。広い市街地を走って行きます。車窓から景色を眺めているとだんだん建物が少なくなって行きます。だんだん乗客が降りて行ってしまったので乗客はサキ一人になってしまいました。とあるバス停でバスが停車しました。おばあさんがバスに乗ろうとしていますが、足の具合がよくないのか、なかなか乗り込めない様子でした。運転手さんが降りて後ろからおばあさんが落ちないように支えていました。東京でのサキなら無視していたことでしょう。けれどもなぜかサキは思わず立ち上がってバスの中からおばあさんを支えました。ステップから登るとサキはおばあさんの腕をとってシルバーシートまで付き添い座らせてあげました。
「ありがどーごしござでゃ。」(ありがとうございました。)
と運転手さんが言ってくれました。
「たすかりますたぁーし。ありがどーごしござでゃ。」(たすかりましたよ。本当にありがとうございました。)
とおばあさんも言ってくれました。
サキは少し笑顔で会釈すると自分の席に戻りました。ちょっとだけ胸が暖かくなりました。
しばらくおだやかな道をゆっくり走って行きます。
サキの降りるバス停に着きました。サキが降りようとしたらおばあさんも降りようとしていました。サキはおばあさんがおりるのを手伝ってあげました。バスの運転手さんはまた

「ありがどーごしござでゃ。」(ありがとうございました。)

と、笑顔で言ってくれました。バスは走り去って行きました。

バス停には女性が一人立っていました。おばあさんを待っていたようです。

「おかえりまれ、おばあちゃん。」(おかえりなさい、おばあちゃん。)

「ただえま。むったどありがどーごしきゃ。」(ただいま。いつもありがとうね。)

「んだ。」(うん。)

「この人がきゃ、私ば手コ助けいしてけだんだし。お嬢さんありがどーごしきゃ。」(この人がね、私を手助けしてくれたんだよ。お嬢さんありがとうね。)

「いえ、私のえもこの近ぐだかきや。」(いえ、私の家もこの近くだから。)

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「孫ばばサ親切サしていただきありがどーごしござじょいした。・・・あい?サキだばね?」(祖母に親切にしていただきありがとうございました。・・・あれ?サキじゃない?)

 

「ああっ!サクラ?」(ああっ!サクラ?)

「高校卒業以来だきゃ。」(高校卒業以来だね。)

「んだっきゃ。」(そうだね。)

「のつかしいのあ。」(なつかしいなあ。)

「のつかしいきゃえ。」(なつかしいねえ。)

「わんつかえサ寄って行ぐ?」(ちょっと家に寄って行く?)

「んだ。」(うん。)

それからサキはサクラとサクラのおばあちゃんと一緒にサクラの家に行きました。サクラの家は昔ながらの農家を改築したもので大きな建物でした。家の周りには大きな木が数本植えられています。

サクラはサキにお茶を入れてくれました。

「サクラのおばあちゃんだったんだきゃ。なもわかきやながったし。」(サクラのおばあちゃんだったんだね。全然わからなかったよ。)

「んだっきゃ、同居すらしうサなたのは最近だかきや、サキは初まなぐて会ったのがも。」(そうだね、同居するようになったのは最近だから、サキは初めて会ったのかも。)

「んだかあ。」(そうかあ。)

それから昔話に花が咲きました。ひとしきり話した後で最近の話になりました。

サクラは近くのお年寄りのための社会福祉施設で働いているとのことでした。毎日の仕事を楽しそうに話してくれました。

(私はお金のことしか考えていなかったのに、サクラはすごいなあ。人の役に立つ仕事で、それもとても大変な仕事なのに楽しそうで、とてもかなわないなあ。)

サキはそう思いました。でもサクラはその後で意外なことを言ったのです。

(つづく)

良い旅を!

※ 私は全国の方言すべてが好きです。今回は会話部分を津軽弁で書いてみたいのですが、これがとても難しいのです。そのため、津軽弁の自動翻訳サイトや津軽弁のリストを掲載しているサイトなどを参照しました。この文章では微妙なニュアンスや言い回しが間違っているかもしれません。ネイティブではないので、もしアドバイスいただければ幸いです。コメント欄かメールでお知らせいただければ直して参りたいと思います。

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