千葉・親子旅 1(旅行連載小説短編)

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スーパーでお買い物

都内に住む足立アオイは40代の主婦です。夫のカヘイは大工をしています。同級生だった二人には19歳の娘のアヤセと17歳の息子のコウドウがいます。四人暮らしです。

今日は近所のスーパーが売り出しの日だったので広告の品を求めて自転車で出かけました。秋も深まり、自転車に乗ると少し肌寒くなってきました。それでも今日は日差しもあり穏やかな気持ちの良い日です。

スーパーで買い物をしました。お目当てのお買い得商品である卵と牛乳を買うことができたので大満足でした。ひととおりの買い物を終えるとレジで精算をしました。おつりを受け取るときにレジ係の女性が言いました。

「こちら応募券です、どうぞ!ありがとうございました。」

「ありがとう。」

応募券を受け取りました。2,000円以上購入すると応募券がもらえるらしいことがレジのポップに書いてありました。精算の済んだ買い物かごに入った商品を、袋に移す作業をするための台まで運んでから、受け取った応募券を見てみました。

[特賞は「地魚お寿司の食べ放題!牧場で動物との触れ合い!南房総の日帰りバスツアー」がペアで当たる!]

と書かれていました。どうやら住所・氏名・電話番号を記入すれば応募できるらしいのです。(当たったらカヘイと一緒に行こうかしら・・・。)と思いました。買った商品を持参した買い物バッグに入れると出口付近に応募券記入用の台と応募箱があったのでその場で記入して応募券を応募箱に投入しました。(これがまた当たらないのよね、たぶん・・・。)と思いながら帰宅しました。その後は家事に取り紛れて応募したことも忘れていました。

千葉・バスツアー当たる!

それから2週間ほど経ってから一通の手紙が届きました。近所のスーパーからです。

[おめでとうございます!特賞の千葉日帰りバスツアーにご当選されました!]

と書かれていました。アオイは驚きました。

「あなた、あなた、大変よ!これ、これ!」

「なんでい、あわてるんじゃないよ。落ち着いて言ってみな!」

「当たったのよ旅行が、日帰りの千葉旅行よ。」

「本当かい、そりゃあお前良かったじゃねえか。」

「お前さんも一緒に行くんだよ。」

「二人で行けるのかい?」

「そうなのよ。」

「そりゃあ楽しみだなあ!」

二人はツアーの内容を見ていろいろな話をしました。子供も大分大きくなったのでこれからは二人で旅行でも行こうかと話していた時期だったのでちょうど良かったのです。

子供たちにも旅行のことは話しておきました。兄のコウドウは「ふーん?」と適当な返事をしました。妹のアヤセは「良かったね!」と喜んでくれました。

とても楽しみにして旅行の日を待ちました。

カヘイ・参加できなくなる

旅行前日、夫のカヘイが浮かない顔で帰ってきました。

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「おい!お前!申し訳ねえ。明日は行けなくなっちまったぜ。」

「どういうことですか?」

「いやあ、実は昔、修業時代に世話になった棟梁にな?どうしても明日は人が足りねえから手伝って欲しいって頼まれちまったんだよ。悪いがこいつは断れねえんだよ。」

「そうかい。棟梁さんて平野さんのことかい?」

「あたぼうよ。他にいねえだろ。」

「まあ、いろいろお世話になってるから断れないわよね。」

「そういう訳だから、よろしくたのむ。」

「よろしくったって、お前さん。そしたら旅行は中止ということね。」

「いや、もったいねえからお前だけでも行ってくればいいだろう。」

「いいのかい?」

「いいから行ってこいよ。」

「あいよ、そうするよ。」

それからアオイは一緒に行ってくれないかと友人に何本も電話をかけました。けれども急なことで皆予定が入ってしまっていて断られてしまいました。仕方がなく夕食の時に子供たちに訊いてみます。

「アヤセ!お前一緒に千葉へ遊びに行く気はないかい? お寿司食べ放題だよ!」

「ごめん、母さん、私、バイトがあってさあ。休めないのよ・・・。こっちも人手不足で・・・。」

「そうかあ、じゃあコウドウはどうだい? 何か用事でもあるのかい?」

「俺は別に用事はないよ。」

「なら行くかい?」

「別に行きたくねえし。」

「お寿司食べ放題だよ。お前お寿司好きだろ?」

「好きだけど・・・。」

「じゃあ決まり!明日、朝7時には家を出発するからね。」

「いや、俺、行くって言ってねえし。」

「お寿司!」

「いや、食べたいけど・・・。」

「やっぱり、決まり。楽しみだねえ。」

「コウドウいいなあ。お寿司かあ。私も行きたかったなあ。」

「バイトが抜けられないんじゃしょうがないじゃないの。母さんがお土産買ってきてあげるから・・・。」

「うん。」

出発

朝7時、母のアオイと息子のコウドウは家を出発しました。コウドウは結局お寿司に釣られて千葉の日帰りバスツアーに参加することになりました。地下鉄で西日暮里駅まで行き、環状線で新宿駅まで行きました。40分ほどかかりました。まだ時間があったので新宿でファーストフードのお店に入りました。軽く朝食を摂ります。

「お昼はお寿司の食べ放題なんだから今あんまり食べすぎちゃだめよ。」

と、頼もしく成長している息子に言いました。

「おう。」

といいながらもコウドウはハンバーガー2個にフライドポテトの大きなサイズ、飲物も大きなサイズを選びました。食べ盛りなのです。アオイはハンバーガーを1個と小さいサイズのコーヒーを選びました。

二人で向かい合って座っていると息子がまだ子供だった頃を思い出しました。

(つづく)

良い旅を!

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