千葉・親子旅 3(旅行連載小説短編)

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横浜ベイブリッジを渡る

バスは横浜ベイブリッジを渡り始めました。バスガイドさんがアナウンスします。

「横浜ベイブリッジは橋の幅が40メートルあります。日本の他の大きな橋の幅と比べてみましょう。レインボーブリッジが49メートル。この横浜ベイブリッジが40メートル。東京ゲートブリッジが24メートル。東京アクアラインが23メートル。となっております。余談ですが、日本で一番長い吊り橋はどこかご存知ですか?」

前の方に座っていた乗客の誰かがとても元気よく答えました。

「横浜ベイブリッジ!」

バスの中に笑いが起きました。

「残念でした。答えは明石海峡大橋です。搭と搭の間の距離のことを言う中央径間が1,991メートルもあります。ちなみにこの横浜ベイブリッジの中央径間は460メートルです。ごめんなさいね。でも元気よく答えてくださりありがとうございました。皆さん拍手!」

バスガイドさんが楽しそうにそう言うとバスの中に大きな拍手が起こりました。バスの中は暇なので乗客はバスガイドさんのなすがままです。わざと間違えて答えたおじさんもまんざらでもなさそうです。バスは楽しい雰囲気になってきました。

「この横浜ベイブリッジの構造は斜張橋(しゃちょうきょう)です。ケーブルで支えているため広い意味ではつり橋の仲間に入ります。橋の長さは全体で860メートル。搭の高さは海面から175メートルです。」

横浜ベイブリッジは堂々としたものです。コウドウはポカンと眺めていました。さらに鶴見つばさ橋を渡ります。そこを通過すると工場の煙突や紅白の市松模様に塗られたタンクなどが見えました。三車線の道路が快適に続きます。、その後トンネルに入りました。トンネル出口が浮島です。その付近で分岐、木更津方面へ向かいます。いよいよ東京湾アクアラインに入ります。ここからは海底になるのでトンネルが続きます。

東京湾アクアライン

「それではここからは東京湾アクアラインに入ります。この海底トンネルができたために川崎から木更津へは15分で行けるようになりました。海を隔てていた二つの街が隣町になったのです。おかげさまで便利になりましたね。」

ひたすらトンネルが続きます。やはりトンネルは圧迫感があります。照明のライトが次々と後ろに流れて行きます。しばらくしてからガイドさんがアナウンスをします。

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「トンネルの入り口から5キロメートルほど走って参りました。この場所には、皆様の足元から頭の上にかけて風の搭と呼ばれる構造物がございます。風の塔は、直径約200メートル、深さ75メートルの人工的に作られた島です。 風の塔の構造物の上の海上には、高さ90メートルの大きな搭と75メートルの小さな塔が建っています。これらはトンネルの中にある空気を排気したり、外から空気を送ったりするための巨大な施設なのです。鉄筋コンクリートでできています。地面の中にある連続して造られた壁は厚さが2.8メートル、全体の高さは119メートル、内径は98メートル、コンクリートの量は102,000立方メートル使われています。そしてこの風の搭の中には大きな排風機があります。この排風機でトンネルの中にある空気を、小さな搭から排気しています。また、送風機もあります。大きな塔から新鮮な空気を吸気して、この送風機でトンネルの中に送風しています。見えないところでみんながんばってくれているんですね。けれども悲しいお知らせですが実はこの風の搭、バスからは見ることができません。大半が土の中と海の中にあるからです。上部構造だけなら上空や海上からご覧になるとよく見えます。もしも、今度羽田空港に着陸される飛行機に乗られる場合にはご覧になれることもあるかもしれません。飛行機の窓から海の上に浮かぶ二つの大きな搭を探してみてください。それが風の搭です。また、風の搭の両脇には海上に三角形の構造物がありますが、これは船舶が衝突した場合に搭を守るための緩衝工(かんしょうこう)と呼ばれる物です。客船など船舶上からもご覧になることができます。さて本日は海ほたるでの休憩を予定しています。そこで少しだけ海ほたるのご説明をさせていただきます。これから皆様に上陸していただきます人工島は全長650メートルです。海ほたるパーキングエリアがございます。これは東京湾アクアライン上にあるパーキングエリアです。パーキングエリアではあるのですが、店舗の設備はサービスエリア並みに充実しています。ただし、ガソリンスタンドはありませんのであしからず。なお、皆様がお乗りのこのバスは今朝ガソリンを満タンにして参りましたのでどうぞご安心ください。さて、この海ほたるは人口的に造られた島なのです。正式には木更津人工島と言います。ですが、このごろではパーキングエリアの名称だった「海ほたる」と呼ぶ人が多いようです。このパーキングエリアでは、来た方向にUターンして戻ることができます。通行料金はアクアラインの対岸に行く場合と同じ額です。海ほたるの駐車場は一階に大型車が93台、二階と三階合計で小型車414台停められます。木更津からお越しだと二階に、川崎からお越しだと三階になります。トイレもございますのでご安心ください。また、この海ほたるにはバス路線もございまして川崎駅と木更津駅を結んでおります。また、この海ほたるには海上保安庁 第三管区 千葉海上保安区の海上レーダーが設置されています。ウエブサイトをご覧になると気象情報がリアルタイムに閲覧出来ます。これは余談ですが、潮干狩りシーズンの土日、祝日はたいへん混み合いパーキングエリアの入口が渋滞することもあるそうです。」

コウドウの座っている席からはバスガイドさんが見えたのでなんとなく眺めてしまいました。そして思いました。

(あんなにたくさんの内容を紙を見ることもなくしゃべっている。すごいなあ!)

「ガイドさんすげえ・・・。」

ぼそっとコウドウが言いました。アオイはよく聞き取れなかったので訊き返しました。

「なんて言ったの?」

「ねんでもねえよ。」

「・・・」

どうにもうまくコミュニケーションが取れません。窓の外に視線を移しため息をついてしまいました。

海ほたる

そうこうしているうちにバスは海ほたるパーキングエリアに入っていきます。

「間もなく海ほたるに到着いたします。こちらで30分間の休憩になります。集合時間までにはバスにお戻りいただけますようにお願いいたします。貴重品はお持ちください。」

バスが停まるとガイドさんは出発時間を書いたプレートを見せながらそう言いました。このプレートは四つの日めくりを連ねたような造りで自在に出発時間を表示できるものです。アナログだけれどよく出来ているのです。

アオイとコウドウもバスを降りるます。バスからとバスガイドさんがそのプレートを胸の前に掲げてにっこり笑っていました。

少し歩いて眺めの良い展望台に行ってみました。水平線が見えます。遠くに横浜や川崎も見えます

「きれいな景色ね!」

アオイが言いました。

「・・・」

コウドウは否定はしませんでした。

青い海はどこまでも広々と広がり、行きかう船もすてきです。

カモメがたくさん飛んでいました。

コウドウは日差しを受けて眩しそうにしています。

「日差しが気持ちいいね!」

「うん!」

秋ですが今日は少し暑いようです。

「ソフト食べようか?」

「うん。」

コウドウは少しにっこりとしました。子供の頃に良く見せていた表情でした。
アオイはその頃を思い出して懐かしい気持ちになりました。

ソフトクリームはミルキーで甘くおいしいものでした。

「おいしいね!」

「うん」

不思議と無邪気な息子が嬉しいアオイでした。

(つづく)

良い旅を!

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