欧州ミュージアム巡りの旅 2(旅行連載小説短編)

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サブローはチエコと旅行する?

チエコはアケミと美味しいランチを摂った後、二人で買い物を楽しみ、喫茶店でケーキを食べました。夕方にはそれぞれ帰宅しました。チエコはささっと夕食を準備しました。おいしいかぼちゃがあったので煮物を作りました。ブリの煮付けとほうれん草のお浸しも作りました。我ながら段取りが良く味にも自信があります。

「あなた~! ごはんですよ~!」

チエコがいつものように台所から書斎に向かって大きく声を掛けると、サブローは読書を終えて伸びをしながら居間にやって来ました。

「お前、帰ってたのか?」

「ええ。今日はどんな一日でしたか?」

「いつもと同じだよ。」

「そう・・・。」

いつもながら続かない会話に小さくため息をついてしまいました。

サブローにも原因があるのだろうけれど、おそらくは自分にも同じくらいの原因があるのだろうなあと思いました。倦怠期というレベルではないので問題は深刻なのかもしれないと思いました。

旅行の話をしてみる

夕食を食べながらチエコはサブローに旅行のことを切り出してみました。

「あなた、旅行は好き?」

しまった、いきなり単刀直入に訊いてしまった。とチエコは思いました。サブローはどんな返事をするのだろう?少しドキドキしました。

「旅行かあ。ずっと行ってないよなあ。若いときは僕も旅行が好きだったんだけどね。」

意外な返事でした。もしかして今でも好きなのかな?

「その頃はどこへ旅行したの?」

「そうだね、近い所なら箱根や日光。遠い所なら九州、北海道かな?」

「ふーん、あなたも旅行好きだったのね。」

「うん、外国だって行ったぞ。カナダ、オーストリア、マレーシア、スイス、イタリア・・・。結構行ってるよね。」

「懐かしい?」

「うん。懐かしいね。旅はいいものだよね。」

サブローはどこか楽しそうで目にも光が出てきました。

「ねえ、今どこか行きたいところはない?」

「特にどこの国に行きたいとかいう希望があるわけではないんだけれどね、しいて言えば博物館や美術館めぐりをやってみたいかなあ。ほら、歴史の教科書とかに写真で載っている物の本物を見てみるのって興味深いじゃないか。」

「博物館や美術館ね、私もそういうの嫌いじゃないわ。」

「そうかい(笑)」

サブローは珍しく優しく微笑みました。

「どこの博物館に興味があるの?」

「やはり大英博物館だね、あとルーブル美術館。」

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「イギリスとフランスね。」

「そうだね。」

「ねえ、それ行ってみる?」

「えっ?」

「私も行きたいわ、二人で旅行しましょうよ。」

サブローは少し考えて言いました。

「そうだね、それもいいかもしれないねえ。」

「行くならパックツアーがいいのかなあ?」

「そんなツアーがあるのかな?」

「調べてみましょうよ!」

「そうだね、食事が済んだら調べてみよう。」

久々に会話が弾んだような気がしました。

夕食後、チエコが食器を洗い終わった頃、サブローは書斎からノートパソコンを持ってきて調べていました。

「どう?あなた。」

「うん、イギリス・フランス旅行で大英博物館とルーブル美術館を見るというツアーは幾つもあるね。」

「そうなの?」

「博物館や美術館だけではなくて他の観光も複数セットになっているね。」

「お得感はあるけど、それだと博物館や美術館に滞在する時間が短くなるのかしら。」

「そうだね、ツアーだと要点を快適にかいつまんで見せてくれるだろうから効率的ではあるんだけれど、僕はじっくりと見たいんだよね。」

「そうよね。私は他の観光も興味あるけど博物館・美術館めぐりがテーマなんだから時間はそこに掛けたいわよねえ。」

「それなら旅行社に相談してみるのがいいかもしれないね。」

「旅行社の窓口はこの辺りでも見かけたことがあるわ。」

「それじゃあ明日一緒に行ってみようか?」

「ええ、そうしましょう!」

夫が旅行に前向きになっている。なんだかとても嬉しくて舞い上がってしまいそうな気分です。チエコはその夜、とても良い気分で熟睡することができました。

旅行社に行く!

翌日、朝食を済ませるとチエコとサブローは八王子にある旅行社の窓口へ向かいました。意外にも駅の近くにありました。

「おはようございます。いらっしゃいませ。」

「おはようございます。旅行に行きたいので少し相談にのっていただきたいのですが。」

「はい、かしこまりました。なんなりとどうぞ!」

それから二人が年金暮らしであること、大英博物館とルーブル美術館をめぐるツアーであること、その二か所に長くいられるもの。など、旅の趣旨や条件をお話しました。

「その条件だと、一般的なツアーでは対応させていたただくことが難しいかもしれません。」

少し不安になりました。せっかく二人で乗り気になっているんだから無理だなどとは言わないでいただきたい。とチエコは思いました。その思いを感じ取ったのか、

「ああ、ごめんなさい。旅行自体が無理という意味ではないんですよ。航空券と宿の予約だけを承る方法をお話するので、ぜひご参考にしていだけますと幸いです。」

「そうですか。どうぞ、よろしくお願いします。」

「はい。」

(つづく)

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良い旅を!