欧州ミュージアム巡りの旅 35 (旅行連載小説短編) 

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パリ最後のお昼

時計が午後1時を指しています。チエコはサブローの体温を測ってみます。37度5分まで下がっています。

(良かった。大分体温が下がってきたわ。)そうチエコは思いました。

体温を測り終えたときサブローが目を覚ましました。

「喉がかわいたよ・・・。」

「そうね水分補給が大事よね。今飲み物をあげるから待っててね!」

チエコはスポーツドリンクを紙コップに注ぐとサブローに渡しました。

サブローは自分で起き上がるとゆっくりと飲み始めました。

「今、体温を計ったら37度5分だったわよ。」

「ああ、随分と下がったんだね、良かった。いろいろありがとうね。」

「もうお昼時間なんだけど何か食べることはできる?」

「うん、少しおなかが空いたかな?」

「それなら良かった・・・。」

チエコはサンドイッチとプリン、カップスープを出しました。意外にもサブローは食欲があったので一人分を食べることができました。チエコも一緒にサンドイッチとプリンを食べました。

チエコはウエットティッシュでサブローの顔からおでこ首すじを拭いてあげました。

「ありがとう。こんなにしてもらって・・・。」

サブローはチエコに感謝の言葉を述べました。

食後には、処方された解熱鎮痛剤や抗生物質などを服用しました。

「この時間なら大丈夫だし、この界隈はとてもお店が多くて面白いところだから少し散歩しておいで、買い物もしたかったんじゃないかな?」

「ううん、私はいいわ、あなただけ置いて行けないもの。」

「ありがとう、そういってもらえるとうれしいな。」

「当り前よ、夫婦なんだから!」

「うん、じゃあ、本音で甘えてもいいかな?」

「えっ、何?」

「うん、ちょっと買い物を頼まれてくれるかな?僕はフランスの車雑誌を読みたいんだけど買ってきてもらえるかな?」

「車の雑誌?」

「うん。どんなのでもいいから。」

「解った。じゃあちょっと行ってくるね。」

「君もこれで何か欲しいものを買うといいよ。本当は今日パリの思い出に何か買ってあげるつもりだったから・・・。」

サブローは手持ちのユーロ全額、日本円に換算すると約3万5千円分をチエコに渡しました。

「あなた・・・。」

再びサブローは眠ります。

チエコは絞った冷たいタオルをサブローのおでこに載せると部屋を出ました。

 

お買い物

(不器用な人、私にパリを楽しませようとしてあんなことを言ったんだわ、きっと。でも、その気持ちはうれしいから応えてあげよう。私も好きなものを買うわ。あなたにも何か素敵なものを・・・。)

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そんなことを思いながら街に出ました。宿の立地はお店の多いエリアでした。チエコはウインドーショッピングをしながら買い物をしました。婦人服店で自分用にブランド物のスカーフを購入しました。アクセサリー店ではネックレスを買いました。自動車雑誌はスーパーで購入しました。玩具店があったので二人で乗ったパリの観光バスに良く似たミニカーを買いました。紳士服店ではサブローのためにフリースを買いました。費用は全部で日本円にして2万円程でした。

部屋に凱旋!?

チエコは部屋に戻りました。

4時くらいになっていました。

「ただいま!」

「お帰り!」

「具合はどう?」

「うん大分楽になったよ。」

「体温を計ってみて!」

「うん。」

体温は37度でした。大分下がりました。

「良かったわね。」

「どうだった?」

「おかげさまでお買い物を楽しむことができたわ、ありがとう!」

「そうか、良かった。少し肩の荷がおりたかな?」

「お買い物の成果をお見せするわね。」

「お願いします。」

「私にはブランド物のスカーフとネックレス。」

「ほう、きれいだね!良く君に似合ってるよ」

「ありがとう。」

「あなたには自動車雑誌とバスのミニカーとフリースよ。」

「ああ、ありがとう。これはうれしいなあ。このフリースも暖かそうだね。ミニカーも気に入ったよ。雑誌もいい感じのだね。」

「雑誌はなるべく絵や写真の多いものにしておいたわ。」

「助かるよ。さすがにフランス語は読めないからね。」

「そしてこれがおつり。」

「こんなに残ったの? 君は買い物上手だね。」

「それほどでも・・・。(笑)」

ふと、チエコは部屋の空気が淀んでいることに気が付きました。

「そうだ、少しお部屋の空気を入れ替えるわね。おふとんに入ってね。入れ替えたらお茶にするから。」

窓を開けると冬のパリの空気が入ってきました。周囲の喧騒も聞こえてきます。

空気が良くなったところで窓を閉めました。少し部屋が温まってからチエコは紅茶をいれると昨日購入したバタークッキーを出しました。

「これ、おいしいんだよね。」

サブローはおいしそうに食べています。

チエコは思いました。

(やはり健康が一番だなあ。この人が健康なら私も幸せ!)

食べ終わるとサブローはまた眠ってしまいました。

チエコはずっとそばについていました。

6時ころになってチエコは思いました。

(夕ご飯はどうしようかしら。)

するとサブローが目を覚ましました。

「体温を計ってみるね。」

体温は36度5分でした。

「平熱ね!」

「うれしいなあ!」

「そうだわ、晩御飯どうする?」

(つづく)

良い旅を!

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