ルーブル美術館内を歩く!
チエコとサブローは二人でルーブル美術館内を歩き始めました。時間も遅いので少し空いているのではないかと思いました。
オーディオガイドで館内のどこでも行けるので、まずは一番有名なものを見ようということになりました。モナリザです。大半の人がルーブルに入ったらまず向かうのがモナリザのようです。
モナリザが展示されている場所は Denon 1st Floor Mona Lisa room Room 6 のようです。デュノン翼の一階 モナリザの部屋 6番の部屋ということだと思います。そこへ移動しながら二人は話をします。
「デュノンなの?ドノンなの?」
「どっちなんだろうねえ。パンフレットや本などではどっちも見たことがあるんだよね。他にドゥノンって書いてる人もいるよね。」
「そうね。」
「判ればいいんじゃないかなどれでも、おそらくはフランス語の発音を正確に日本語表記すること自体に無理があると思うんだよね。」
「そうなの? そうかな? 英語の場合は日本語の発音でも通じる場合があるっていう話を聞いたことがあるわよ。」
「えっ?そうなの?」
「ほら英語でのイチゴの発音の話があるじゃない。知ってる?」
「えっ?知らないなあ。」
「うん。イチゴのことをストロベリーって発音すると通じないのよね。ところが七郎兵衛って言うと通じるらしいのよねえ。」
「本当?それ。」
「本当よ。他に、何時?って訊くときにホワットタイムイズイットナウだと通じないけど掘った芋いじるな!だと通じるっていうのもあるわよ。」
「あれかな?日本人の英語は子音の発音が弱いから、そういう言い方だと子音が発音しやすいってことなのかなあ?」
「そうなのかもね。」
「面白いね。」
「ええ、面白いわ。」
そんなたわいない話をしているうちに人だかりのしている展示室が近づいてきました。モナリザの部屋です。
モナリザ
『モナ・リザ』 レオナルド・ダ・ビンチ
日本で知られている作品名は『モナ・リザ』です。多くの国でも『Mona Lisa』と呼ばれています。イタリア語では『La Gioconda』。フランス語では『La Joconde』と呼ばれます。油彩画で肖像画として、女性の上半身のみが描かれています。世界でもっとも有名な美術作品です。1503年から1506年の間に制作されたと言われています。
この肖像画はイタリア、フィレンツェの豪商フランチェスコ・デル・ジョコンドの妻、リザ・デル・ジョコンドであるという説が有力です。ポプラの板に描かれています。
ミステリアスでダイナミック、繊細な立体表現など、多面的に斬新な作品だったので多くの人を魅了しました。また、よく研究されました。空気遠近法が取り入れられています。ラファエロにも影響を与えたようです。
この作品が『モナ・リザ』と呼ばれているのは、16世紀のイタリア人芸術家で伝記作家でもあるジョルジュ・ヴァザーリの著書『画家・彫刻家・建築家列伝』の中で「レオナルド・ダ・ヴィンチが「モナ・リザの肖像画制作」の依頼を受けた」という記述をしたことからのようです。
レオナルド・ダ・ビンチはこの『モナ・リザ』を生涯手元に置いていたそうです。彼が1525年に死去した際に弟子のサライに遺贈されました。やがてフランス王フランソワ一世が購入しました。フォンテーヌブロー宮殿に100年以上所蔵されていました。ルイ14世に寄贈されるとヴェルサイユ宮殿に移されます。フランスが現在の国の形になったときにルーブル美術館に所蔵されました。ナポレオン一世はテュイルリー宮殿に移し、プロイセンとフランスが衝突した1870年から1871年にはブレスト・アーセナルに移されました。その後、ドイツやイタリアと対外政情的に非常に危険な状況になった時にはアンボワーズ城、ロク・デュ修道院 、シャンポール城を転々とした後、モントーバンのアングル美術館に収められました。現在はこのルーブル美術館が所蔵して常設展示されています。
1911年8月21日にルーブル美術館から持ち去られてしまったことがあります。この時に『モナ・リザ』は世界的に有名になりました。事件に無関係なフランスの詩人ギヨーム・アポリネールとその友達のパブロ・ピカソも警察の取り調べを受けました。証拠不十分で二人とも釈放されました。2年後に真犯人ビンセンツォ・ペルージャが現れると完全な無実が証明されました。ペルージャはアパートに『モナ・リザ』を隠していましたがイタリア、フィレンツェのウフィツィ美術館に売却しようとして発覚したようです。その後、イタリア中を巡回展示された後、1913年にルーブル美術館に返却されました。その後1956年には観客から液体を掛けられたり石を投げられて傷を受けることもありましたが修復されています。それ以降は防弾ガラスのケースに収められるようになりました。その後も1974年にはペイントスプレーをかけられたり、2009年にはコップを投げられたりもしていますがどちらも無傷で済みました。
『モナ・リザ』は制作されてから500年以上が経過していますが。初期の修復者たちが細部にわたるまで 細心の注意を払って修復作業を行い、その後も幾度も修復が行われてきたようです。1952年に開催された美術品に関する国際会議では、「この絵画の保存状態は極めて良好である」とされました 非常に適切に保管されてきた作品のようです。
チエコはモナリザをじっくり眺めていました。モナリザもこちらを見ています。
「私がイメージしていたよりも小さく感じるわ。」
「そうかなあ、私は小さいと聞いていたから思ったより大きく感じるかな?」
「人によって感じ方は違うのね。」
「そうだね。」
「それにしても不思議な眼差し(まなざし)よね。」
「そうだね、なんだか気になる感じなんだよね。なんでなんだろう?」
「そうねえ。ミステリアスねえ。」
モナリザの放つ不思議な魅力に二人はしばらくそこを離れることができませんでした。
(つづく)
良い旅を!