欧州ミュージアム巡りの旅 20 (旅行連載小説短編)

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「ベラスケスの『王女マルガリータの肖像』はまた見ることのできる機会があればいいね。」

「ええ、いつかぜひ見たいわ。」

『民衆を導く自由の女神』

「さて次はどうしようか?」

「私の見たいリストだと、ウジェーヌ・ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』かな?」

「よし、今度はそれを調べてみよう。」

サブローはオーディオガイドで調べてみます。

「さすがにこれはバッチリあるようだよ!」

「よかったわ!」

「もしかして有名な絵はなるべく貸し出さないようにしているのかなあ?」

「どうかしら?」

後で二人が館員さんにこのことについてお尋ねしてみたところ、この『民衆を導く自由の女神』であっても貸し出すことはあるようでした。

Denon 1st Floor Mollien Room 77 デュノン翼 一階 モリアンの間 番号77の部屋

二人は『民衆を導く自由の女神』にたどり着きました。

ドラクロワ特有の力強い画風で迫力があります。教科書でよく見る絵なので感慨無量です。

「すごい迫力ね!」

チエコは興奮気味です。

「本物は、やはり力強いね!」

サブローも見とれます。

この作品は日本では慣習的に『民衆を導く自由の女神』と呼ばれています。けれども原題は La Liberté guidant le peupleなので、正しくは「民衆を導く自由」です。

絵画自体はフランスのシンボルであるマリアンヌの姿が中心に描かれています。フランスの国旗を右手で掲げて民衆を導いています。ロマン主義の代表作です。ドラクロワはマリアンヌを通して自由、祖国(母性)、などの理念を比喩的に表現しています。後ろに続くシルクハットの男性は、ドラクロワ自身であると言われています。1831年サロン展に出品されました。フランス政府が買い上げましたが1832年以降1848年までの16年間は恒常的な展示が行われませんでした。1874年ルーブル美術館に収蔵されました。1999年には「日本におけるフランス年」の文化財海外交流展の一環で東京国立博物館に1ヶ月貸し出されました。その時日本からは奈良県にある国宝である彫像がフランスに貸し出されました。 『民衆を導く自由の女神』がフランス国外に貸し出されたのは、イギリス・アメリカ・日本の3か国のみです。2013年には落書きされるも翌日には修復されました。この作品は現在に至るまでルーブル美術館に収蔵され展示されています。

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「よかったわ、この作品を見ることができて・・・。」

「そうだね、よかったね。」

二人は同じ部屋にあった作品もいろいろと観覧しました。特に印象に残ったのはテオドール・ジェリコーの『メデューズ号の筏』です。

ミレーの『落穂拾い』と『晩鐘』はどこ?

「次はどうする?」

「次はミレーの作品が見たいわ。」

「『落穂拾い』かな?」

「ええ。」

オーディオガイドとスマートフォンでサブローが調べます。

「この流れはもしかしてここにはないとか?」

チエコが不安になって訊きます。

「ご名答。ミレーの『落穂拾い』もここにはなくてオルセー美術館にあるらしいよ。」

「そのパターン多いわね。」

「そうだね。」

「『晩鐘』はどうなのかしら?」

サブローが調べます。

「やっぱりそれもオルセー美術館にあるね。」

「私が見たいものはみんなオルセー美術館にあるのね。」

「そうだね。」

二人で笑ってしまいました。

「あと私が見たいものはギリシアとエジプト、ヨーロッパの彫刻といくつかの王宮の間と王冠ね。」

「そうだね、間もなく閉館時間になるから今日はもうこのくらいにしておこうか?」

「そうね、ここを出てお夕食にしましょうか?」

「賛成!そうしよう。」

サブローはオーディオガイドを返却してパスポートを受け取りました。

ルーブル近くのレストランで晩御飯

二人が外に出ると辺りはもう暗くなっていました。サブローはスマートフォンで人気のレストランを探しました。

ルーブル美術館の外ですがすぐ近くにレストランがありました。予約をしていないけれど大丈夫か聞くと大丈夫とのことでした。お客さんはまばらでした。フレンチのフルコースを注文しました。しっかりした味付けでしたが美味しいものでした。二人が食べ終わる頃にはお客さんでごったがえしていました。

「私たちは少し早く入ることができたんだね。」

「ええ、良かったわ。それにおいしかったわよね。」

「ああ、大満足だよ。」

二人はお会計をして外に出ました。少し寒さを感じます。

パリの街を歩く

チエコとサブローの二人は、リヴォリ通りを宿に向かって歩き始めます。ルーブル美術館を右手に見ながら歩きます。パリの街並みは美しく、ロマンチックな気分になります。

「いい雰囲気だね。」

「そうね。」

二人でいろいろな話をしながら歩きます。

「車は一方通行なんだね。歩行者は関係ないからいいね。」

「そうね。」

20分ほどで宿に着きました。

部屋に入ってみるとスーツケースの上に置いた糸はそのままでしたから物色はされていないようでした。

「部屋も安全なようだよ。」

「良かったわ。」

(つづく)

良い旅を!

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