欧州ミュージアム巡りの旅 21 (旅行連載小説短編)

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部屋でお茶

チエコとサブローは交代でお風呂に入りました。おしゃれな内装の浴室でした。ゆったりとお風呂に入ると全身の疲れが取れるような気分になりました。パジャマを着たのでもうあとは眠るだけという状態になりました。サブローがミネラルウォーターをポットに入れてお湯を沸かしてありました。そのお湯で薄めの紅茶を作って二人で飲みました。例のイギリスで買った紅茶です。ほっと一息できる時間です。

「今日は下見のつもりだったんだけど、意外にもたくさんの絵を見ることができたね。」

「そうね、素敵な絵を見ることができてうれしかったわ。ありがとう。でもね、私が見たい絵でもルーブル美術館にはないものもいくつかあったわ。まあ、私の準備が甘かったんだけどね・・・。でも私の見た本が古いとは思わなかったわ(笑)」

「まあねえ、うん、そうだよね。でもね、図書館の本のことまで気にすることはないよ。それに、こういうのも楽しいよ。トラベルの語源はトラブルだという説があるんだよね。旅行はいろいろなことが起こるんだけれど、二人でそれに対処していけばトラブルも良い思い出になるかもしれないよ。だから気にしないでね。それにしても昨日見ることができなかった作品はみんなオルセー美術館にあるんだよね。だからきっとそこで見ることができるよね。だから明日はルーブルを見るとして、あさってはオルセー美術館に行くというのはいかがかな?」

「そうね、そうしましょうか。明日はルーブルの彫刻をいっぱい見ましょうね。」

「そうだね、楽しみだね。」

ロンドンからのユーロスターでの移動とルーブル美術館での見学と、外食と盛沢山の内容だったので二人ともくたくたに疲れていました。ベッドに入ると二人とも数秒で深く眠ってしまいました。

パリの朝

朝、二人とも寝坊をしてしまいました。二人が目を覚ますと朝9時になっていました。軽く伸びをしながらサブローがチエコに声をかけました。

「おはよう。チエコ。」

「おはようあなた。」

「ちょっと寝過ごしちゃったね。」

「そうね、宿の朝ごはん食べ損ねたかな?」

「たぶんね。でも外のカフェでも朝食を食べることができるんじゃないかな?」

 

朝食

支度を済ませると、自分たちの物はすべてスーツケースに仕舞いカギをしっかりと掛けました。部屋の施錠もして出かけます。

宿のそばに朝食を摂れそうなお店を見つけました。お店の席に座って他の席で食事をしている現地の人たちや窓から見える街を歩く人々を眺めながら朝食を食べているとチエコは(ああ、今私たちはパリにいるんだわ・・・。)と旅情を感じることができました。

「あなた?こうして街でお食事をしているとパリにいるって実感が湧くわね。」

「そうだね。この街が気に入ったの?」

「ええ、とっても。昔からあこがれていたし・・・。」

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「そうかあ。もしもこの街が気に入ったのなら、次に来るときにはコンドミニアムを1~2ヵ月借りて短期間生活してみるのもいいよね。そこを起点に色々な所へ観光に出かけるのもいいものだよね。」

「そうね、パリを起点にしたらモンサンミッシェルとかニースとかいろいろ出かけることができて楽しいかもしれないわね。でもそうしたらフランス語を少し勉強した方が便利そうね。」

「そうだね。語学は役立つよね。観光についてはフランスだけでなく、ドイツやイギリスなど他の国まで出かけることも可能だよ。」

「それいいわね。」

「ただし、二つだけ大きな条件があるんだけどね。」

「二つの大きな条件?」

「うん。第一はお金を持っていること。第二は健康であること。かな?」

「確かに、でもそれは旅行だけに限らないわ。老後の人生ではどちらもとても大切よね。」

チエコは朝食の後、デザートにマカロンを食べたくなりました。そこで注文して二人で食べました。

「パリと言えばやっぱりマカロンでしょ?」

「そうだね。とっても甘いけどおいしいなあ!」

お腹がいっぱいになりました。少しコーヒーを飲みながら食休みをしました。気分が落ち着いたところでお店を出て再び歩き始めます。

再びルーブルへ

ルーブル美術館までの道順に慣れたのか、疲労が取れたからなのか、15分くらいでルーブルに到着できました。

「今日は彫刻を見るんだったよね。」

「ええ、さすがに大きい作品なのでどこかへ出かけていなければいいんだけれど・・・。」

「そうだね。あるといいね。」

有効なミュージアムパスがあるので昨日は入れなかった入り口から入ることができました。チケットは買わなくていいけれど保安検査は必須でした。

「検査って本当に必要なのかな?」

チエコがそう訊きました。

「そうだね、面倒なんだけれど、そのおかげで安心して館内を歩けるならそれもいいよね。もちろん美術品を守るためにも必要ことなんだろうけどね。」

サブローはそう答えました。

「そうね。」と答えておいて、チエコは心の中で、(検査をしなくても誰も悪いことをしない、そんな良い世界になればいいのになあ・・・。)と思っていました。

サブローはルーブルで再びオイーディオガイドを借りました。

「これはとっても便利な機械だよね。」

感慨深そうにサブローはそう言います。

「まずはエジプトからでいいかな?」

「ええ。」

「君が見たいものは『スフィンクス』と『ファラオ像』、『書記座像』だったよね。

さっそく調べてみようね。」

「ええ。お願いするわ。」

(つづく)

良い旅を!

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本年はありがとうございました!

お話の途中ではありますが、作者である早坂一俵より、2017年のお礼を申し上げます。幾度もこのサイトの文章をお読みくださり、誠にありがとうございました!新年以降も書き続けて参りたいと思います。新年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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