欧州ミュージアム巡りの旅 22 (旅行連載小説短編)

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※ 写真はエジプトのイメージです。

エジプトの展示場所へ

サブローがオーディオガイドで調べてから言いました。

「チエコ!『スフィンクス』と『ファラオ像』、『書記座像』はどれもここにありそうだよ。」

「そう、よかったわ。」

二人はエジプトの展示室に向かいました。

タニスの大スフィンクス

シュリー翼 地上階 スフィンクスの地下展示室 展示室1

「君の言うスフィンクスは。このタニスの大スフィンクスでいいのかな?」

「ええ、これこれ、これが見たかったのよ。」

スフィンクスは一般に、体がライオンで頭が人間の王様という怪物のような姿をしています。このスフィンクスも体を伸ばして爪を出して腹ばいになっています。今にも飛びかかってくるのではないかという勢いを感じます。

この彫刻は、エジプトの国外で保存されているスフィンクス像の中では最大級のものです。細部の彫りが正確で、表面もよく磨かれています。威厳も感じることができます。素晴らしい出来ばえです。

このスフィンクスは1825年に、タニスのアメン・ラー神殿の廃墟から発見されました。タニスは第21王朝~第22王朝の首都だった場所です。

この彫刻にはアメンエムハト2世、メルエンプタハ王(第19王朝)、シェションク1世(第22王朝)と、王様の名前が複数刻まれています。しかし、この像にあるいくつかの細かな部分を手がかりにして研究した結果、これらの王様たちよりも昔の古王国時代(紀元前2600年ころ)の制作なのではないかという説にたどり着いた考古学者もあります。

一般に古代エジプトには王名を囲む長楕円形の枠である「カルトゥーシュ」というものがあります。それを連想させる「シェン」のヒエログリフがこの像には刻まれています。この彫刻の台座の上、スフィンクスの足元にあります。このことから、この彫像が王の記念物として制作されたものであることは証明されています。

ただし、このスフィンクスの顔は、現在判っている範囲でのどの王様の顔とも似ていません。

「スフィンクス」は実はギリシア語です。エジプト語での本来の言い方は「シェセプ・アンク」です。日本語にすると「(王様の)生き写しの像」のような感じでしょうか?

「立派なスフィンクスを見ることができて良かったわ。」

「僕も興味深かったよ。」

 

ファラオの像

シュリー翼 1階 展示室12

「ラムセス2世」像
紀元前13世紀頃に制作されたものです。古代エジプト史に残る偉大なファラオ、ラムセス2世は紀元前1314年頃から紀元前1224年頃に君臨していた王です。アブ・シンベル神殿を造営したことで知られています。

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新王国時代、第19王朝、ラメセス2世治世下(前1279-前1213年)に制作されました。
タニス出土で閃緑岩の丸彫り、インタリオ。高さ2.56m、幅0.80m、奥行き1.17m

「立派な王様の像ね。威厳があるわよね。」

「うん、この王様は随分権力があったようだから。やはり迫力があるね。」

書記座像

古代エジプト美術 シュリー翼 2階
古王国時代 紀元前2700ー紀元前2200年頃 展示室22
 
とても有名な像で人気があります。この像はおそらく先王朝時代末期から中王国時代末期(前3800-前1710年頃)に制作されたものと考えられています。この書記が誰であったのか、名前や称号、実際に生きていた年代等、何も判っていません。

この像の書記は、あぐらをかいて座っています。右脚を左脚の前にして交差させています。両膝でぴんと張られた白い服を台の代わりにして左手で一部が広げられたパピルスを持っています。右手にはおそらく筆を握っていたと考えられていますが、今日では失われてしまっています。目の象嵌細工(ぞうがんざいく)は緻密に作られています。赤い石目模様の入った白いマグネサイトの塊の中にわずかに円錐台形をなしている水晶を嵌(は)め込んで作られています。眉毛は黒い線で素描されています。手、指、爪等が繊細に彫られています。1998年の修復で表面に塗られていた蝋(ろう)の厚い層を薄く取り除いたので古代の多彩色が以前より鮮明になりました。

「この書記が誰なのか?」という仮説の中で最も有力な説は、極端な薄い唇や肥大した胸などの体の特徴から「ペヘルネフェル」という人物であるとする説です。一般にこの書記座像は、第6王朝のものと思われていますが、「ペヘルネフェル」の彫像は、第4王朝のものと確定されています。もしこの像が「ペヘルネフェル」であるのなら、この像は第4あるいは第5王朝(紀元前2600-紀元前2350年)の制作と考えることができます。

エジプト、サッカラ、セラペウムのスフィンクス参道の北で出土しました。石灰岩の彫刻です。ほんの一部に木も使われています。高さは53.70㎝、幅44㎝、奥行き35㎝です。

1854年、発掘調査の分配分としてエジプト政府から寄贈されました。

「思ったよりも小さく感じたわ。でもよく出来ているわね。」

「そうだね、僕も同じ印象だね。」

二人は他のエジプト関連の展示も一通り見てからエジプトの展示室から出ました。

(つづく)

良い旅を!

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新年あけましておめでとうございます!

本年もどうぞよろしくお願いいたします。出来る範囲で更新を頑張りたいと思います。皆様に役立つブログであることを目指しています。同時に気長に続けて行けることも目標としています。ぜひ、このブログをお楽しみいただけますとうれしく思います。皆様のご健康とご発展の良い年になりますように!

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