欧州ミュージアム巡りの旅 23 (旅行連載小説短編)

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ギリシアの展示室へ

チエコとサブローは次にギリシアの展示を見ることにしました。
例によってサブローがオーディオガイドやスマートフォンで調べます。すると『ミロのビーナス』が シュリー翼1階 展示室7で『パンアテナイア祭りの娘の行列』がシュリー翼 1階 展示室6と、ほぼ同じ場所にあることが判りました。ところが、『サモトラケのニケ』はデュノン翼 1階 サモトラケのニケの階段 にあり、少し離れた場所であることが判りました。そこで、先に『ミロのビーナス』と『パンアテナイア祭りの娘の行列』を見て、その後で『サモトラケのニケ』を見学するということにしました。

『ミロのビーナス』

シュリー翼1階 パルテノンの間 クラシック時代のギリシャ彫刻 紀元前5世紀
展示室7

ミロのビーナスは1820年にギリシアのキクラデス諸島の南西の島、メロス島で発見されました。「メロス」を現代的に発音すると「ミロ」になります。そのため「ミロのビーナス」と言われるようです。リヴィエール侯爵がルイ18世に献上し、翌年ルーブル美術館に寄贈しました。この像の特徴は、両手を失っていることです。腕輪、イヤリング、髪をまとめる帯などの鉄製の装飾品を固定していたと考えられる穴が残っています。

どんな仕草をしていたのか?どんな物を持っていたのか?どんな装飾品を身に着けていたのか?など、多くの謎に包まれていてミステリアスなのです。とても優美でもあり人気があります。ヘレニズム時代末の彫刻の特徴があります。螺旋状の構成も特徴の一つです。

「きれいね。後ろ側はどうなっているのかしら?」

「後ろ側にも回れるみたいだよ。」

二人は「ミロのビーナス」を正面から見た後、後ろ側に回ってみました。

「ああ。これは。ふーん。」

サブローは思わずため息をついてしまいました。

「見てはいけないものを見てしまった気がするわ。」

チエコも少し動揺しているようです。

「こういう見方がどうなのかとは思うけれど、この像の場合、前から見るのもいいけれど、後ろから見るのもいいよね。彫刻のラインが美しすぎるんだよね。」

「そうね、私から見ても魅力的だわ!」

しばらく二人で見とれてしまいました。

 

『パンアテナイア祭りの娘の行列』

シュリー翼 1階 ディアナの間  古代ギリシャ・エトルリア・ローマ部門の最新動向 展示室6

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このプレートには2人の進行係と6人の若い娘たちが浮彫として彫刻されています。アテナイ(現在のアテネ)のパルテノンに取り付けられていました。クラシック時代のギリシア美術を代表する作品です。紀元前445年-紀元前438年の間
にかけて造られたと考えられています。このプレートはそのパルテノンの160メートルのイオニア式フリーズの一部として取り付けられていました。そこには360人の像が表現されていました。

1789年、アテネのアクロポリス上のパルテノンにて、ルイ=フランソワ=セバスチャン・フォウヴェルにより収集されました。1784年にコンスタンティンノープルの大使ショワズル=グーフィエ伯爵のコレクションとなりました。1798年にルーブル美術館に収蔵されました。

この続きの部分はロンドンの大英博物館に保管されています。

無着色のこの浮彫は現在無着色に見えます。制作当初、背景は青色で、人物の髪とそれらの衣服の一部は金色に着色されていたと考えられています。また、今日失われた装身具などにより飾られていたようです。

『パンアテナイア祭りの娘の行列』と言われていますが、正しくは『エルガスティナイのプレート』というようです。

ペンテリコ産大理石でつくられています。アテネのアクロポリスにあるパルテノン神殿の足元にて発見されました。高浮彫です。付け加えられた部品の跡があります。高さ96㎝、幅2.07m パルテノン東側フリーズの破片です。

「これも美しいわね。」

「そうだね。」

「今は真っ白だけれど造られた当初はカラフルだったらしいよ。見てみたかったなあ。」

「そうね、キラキラした装身具が付いていてとてもきれいだったらしいわね。」

二人は他のギリシアの展示を一通り見てから『サモトラケのニケ』のある場所に向かいました。

『サモトラケのニケ』

デュノン翼 1階 サモトラケのニケの階段

二人が到着すると像の周りでは大勢の見学者が記念撮影をしていました。

この、羽根の付いた彫像は紀元前2世紀初頭(紀元前190年頃)記念としてロードス島の住民が献上したものと思われます。エーゲ海の北東に位置する小島サモトラケ島で発見されました。躍動感あふれる翼をもつヘレニズム時代の傑作です。クラシック時代の基本を押さえながらペルガモンのバロック的彫刻を予感させる造りになっています。

1863年にトルコのハドリアノポリスのフランス副領事であったシャルル・シャンポワゾ調査隊が発見しました。1879年に取得しています。

丸彫 高さ3.28m

「これは美しいけれど、力強さの方を余計に感じるね。」

「そうね、失われている部分が多いから何とも言えないんだけれど女性なんだけれど勇ましい感じかな?」

「そうだね。君みたいに?」

「えっ?私はそんなことないわよ。」

「ごめん冗談だよ。」

「まあ。」

二人はお腹が空いてきました。

(つづく)

良い旅を!

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