欧州ミュージアム巡りの旅 25 (旅行連載小説短編)

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『ルイ18世の間』

リシュリュー翼 2階 王の部屋 展示室75

チエコとサブローはデュノン翼からリシュリュー翼に移動しました。壁から天井まで全体がきらびやかに装飾された部屋に入りました。そこはテュイルリー宮でルイ18世、次いでシャルル10世が使用した部屋の調度の展示でした。

チュイルリー宮、ルイ18世の寝室の壁パネル 王政復古期に、チュイルリー宮の王の寝室において内装の一部をなしていたパネルです。1817~1819年にグラン・フレール社によって作られました。図案はジャック=ルイ・ド・ラ・アメッド・ド・サン=タンジュ (1780~ー1860年)が考案しました。織物は部屋の建築に合わせてあります。
ビロード、ブロケード織の布のアップリケ、絹、金糸、金ループ、金糸刺繍のアップリケ、金属製飾り鋲(びょう)などから作られています。当時としては最先端技術だった「レイモン・ブルー」という染色の技術使用で美しく仕上がっております。これは絹織物の染色にインディゴを用いずシアン化鉄を使用して開発された色でした。技術的な快挙を達成したものと言われています。この寝室は以前はナポレオン1世が使用し、ルイ18世が使用しました。後でシャルル10世も使用しました。

「華やかね。」

「そうだね。」

「私たちの家にもこういうの一つどうかしら?」

「大きすぎて掛けられるところがないよ。」

「それにちょっと豪華すぎて落ち着かないかもしれないわね。」

「そうだね。この壁パネルを写して印刷してある絵葉書くらいなら飾れるかな?」

「絵葉書?それならルーブルの建物全体だって我が家の寝室に飾ることができるわね。」

二人で少し笑いあいました。

チエコはふと思いました。旅行に来る前は二人で話すことも少なかったし、ましてや笑いあうこともなくなっていました。ですから旅行に来て本当に良かったと思いました。きっとサブローも旅行が好きなのに違いないと思いました。いつもよりも積極的に行動しているし頼りがいもあるし、何よりも目に光があります。チエコはサブローを少し見直した感があります。しかし、同時に「あの人は私をどう思っているんだろう?」という疑問がふと頭に浮かびました。

 

『エフィアの間』

リシュリュー翼 2階 エフィア城 展示室32

エフィア城の寝台 17世紀中頃フランスのものです。ピュイ=ド=ドーム県エーグペルス市近郊にあるエフィア城にありました。

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胡桃材の白木です。毛先を切って模様を浮き出させたジェノヴァ製の絹でできたビロード、絹刺繍のアップリケも付いています。

高さ2.95m、 幅1.92m、奥行き1.65m
1856年にエフィア城の家具が売却された時に肘掛け椅子6点とともに取得されたものです。国立中世美術館(クリュニー美術館)からルーブル美術館に寄託されました。

寝台は制作当初の装飾を保っています。現存する17世紀の寝室内装が判る資料として貴重なものです。

「きらびやかなものね。」

「そうだね。こういう寝具で眠るといい夢が見られるのかな?」

「見られるかもよ~。」

「そうだね。さて、次は『カモンドの間』だよね、調べてみるね。」

その後サブローは『カモンドの間』についていろいろと調べましたが、結局良く判りませんでした。仕方がないので二人でその後も幾つかの部屋を見て回りました。もしかしたらそのうちの一つがそうだったのかもしれません。

『ナポレオンの玉座』

リシュリュー翼 2階 ジャコブ=デマルテル 展示室72

この部屋に大きな「N」マークが付いた椅子がありました。おそらくその椅子が「ナポレオンの玉座」だと思われました。

しかし、チエコが言うのには、

「それは私が日本の本で見たものとは違うものよ。」

とのことでした。サブローは少し戸惑いました。

「私が本で見たナポレオンの玉座は前の脚にヘラクレスの頭が付いていて、脚の一番下はライオンの足になっていたのよ。これは前の脚に装飾がほとんどないわ。」

「そうだね、きっと別の物なんだろうね。君の言っている玉座はおそらく、このルーブル美術館のどこか別の場所に展示されているのか、ここの収蔵庫に仕舞われているか、修復中か、もしくはよりふさわしい美術館に移されたか、場合によっては貸し出されているかもしれないね。」

「そうね、そうかもしれないわね。」

ルーブルの見学を終えて

「おかげさまでルーブル美術館で見たかったものをいろいろ見ることができたわ。」

「よかったね。」

「ありがとう。」

「明日はオルセー美術館を見てから市内バス観光をしようか?」

「そうね、そうしましょう。」

二人はルーブル美術館を出ます。

「さて、今度は夕ご飯かな?」

「そうね、おなかが空いてばっかりね。」

「まあ、とても歩いているからね、栄養補給は必要だよね。」

「そうよね。」

「何か晩餐のご希望がございますか?王女様。」

「わたくしはエスカルゴを所望いたしますわ。ナイト殿!」

「かしこまりました。王女様。」

このあとナイト、いやサブローはおいしいエスカルゴ料理のお店を頑張って探すのでした。

(つづく)

良い旅を!

参考文献:講談社 世界の博物館 10 『ルーブル博物館』

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