東北旅行
親族10人で東北を旅行をしたことがありました。今から30年ほど前のことです。自動車2台に分乗しての旅でした。道路事情も良く、快適な旅でした。
宮城県から岩手県にかけていろいろな観光地を訪ねました。昔の俳人が句を詠んだという最上川を見たときは本当に感動しました。流れは確かに速かったのです。
車内ではなぜかウクレレを伴奏に歌で盛り上がって楽しかったのを覚えています。
牛の産地
東北にもたいへんおいしい牛肉の産地があります。そこをとおりかかったとき、父がこう言ったのです。「今日はおいしい牛を食べるよ、僕のおごりだからね!」皆大歓声です。国道沿いにその産地の牛のステーキを食べさせてくれるお店がありました。皆、意気揚々とお店の玄関に向かったのですが、突然皆無言になり足がぴたりと止まったのです。店の入り口にはこう書いてあったのです。
「最高級牛ステーキセット お一人様16,000円」
父の顔がこわばりました。こちらは10人です。一人16,000円なら合計160,000円になってしまいます。さすがの父もこれでは予算オーバーです。皆何も言わずに車に戻りました。
お一人様16,000円は二人きりの記念日や大切なデートなら可能かもしれませんがさすがに10人分全額は今の私でもちょっと無理ですね。
結局父は「ごめん、みんな、他のものをさがすね。」 と言いました。皆、責めることもなく「うん」とうなずいたのでした。しばらく国道を走るとレストランがありました。車を降りて静かに入り口に近づいてみると、こう書いてあったのです。
「最高級豚ステーキセット お一人様1,600円」
ゼロの数をよく確かめてからお店の中に入りました。そこで出されたポークステ-キは濃厚な味わいで風味も良く全員が大満足しました。10人分を父が格好良く支払い一件落着したのでした。
余談ですが、初めに入れなかった16,000円の牛ステーキのお店が今でもその値段で営業しているのかどうか気になります。あれから時代もずいぶん変わりました。けれどもそのお店はぜひ強気でその値段で今も営業を続けていて欲しいと思うのです。本当に良いものを適正な価格で提供することは間違っていないからです。ぜひもう一度訪ねてみたいです。今度は食べることができると良いのですが、さて・・・。
教訓 その1
① 旅行先での飲食についてはお店を事前に調べて費用を把握しておくほうが良いです。現在ではどのお店もインターネットに情報を出していますから調べるのはそれほど難しくはないと思います。定休日や営業時間、その他の注意事項なども把握しておくと安心です。
② 状況により臨機応変にプランを変えていくのも旅行では「あり」だと思います。トラベルの語源はトラブルです。旅先での困難をどう解決して行くかも旅の醍醐味ですね。
③ 旅先ではやはりお金が大事です。予算オーバーな場合はどうにもなりませんが、ここぞと言うときに力を発揮するのが現金です。しっかり準備して行きましょう。
④ 旅先で見栄を張ることは必要ありません。身の丈に合った旅をすれば良いのです。ただし、その中で少しだけ背伸びをしていつもの自分ではない時間を過ごすことはやぶさかではありません。
⑤ 「旅の恥はかき捨て」とも言います。少しくらい恥をかいても気にしないことです。気分をすぐに立て直して旅を楽しむのが大事です。
その後、旅は更に続きます。私たちは北上を続けます。そばの産地では伝統の特殊な食べ方を味わいました。小さいおわんに薄いツユに入った蕎麦(そば)が入っていて食べ終わるとすぐにおかわりが投入されるというシステムです。私は63杯食べました。最後は投入される前におわんの蓋(ふた)でおわんをふさぐのが合図のようです。
花巻では秀逸な童話作家さんの記念館がありました。本人のものとされるチェロや鞄が展示されていました。黒板には「下ノ畑ニ居リマス」と書いてあって当事を彷彿とさせる展示内容となっていました。作品の世界観を育んだ自然環境に納得でした。実際に現地に足を運んでみることの素晴らしさを知った旅でした。
その旅では皆で早池峰山(はやちねさん)にも登りました。標高は1,917mです。北上山地の最高峰です。高山植物の花が、とても爽やかに咲いていました。登山の装備は必要です。
10人で行った旅行ですが、3人は花巻空港から先に帰って行きました。見送られる側はそれほど悲しくないかもしれないのですが、見送るほうはとても寂しい気分がしました。
教訓 その2
① 観光の内容を事前に調べておくほうが安全です。作法を知っておけば恥をかきません。見学するものに関する書籍を事前に読んでおけば見学時に感動することができるかもしれません。あるいは隠された本当の意味が理解できるかもしれません。
② 旅行の途中で登山をするということも可能です。その場合は準備をしっかりしておくことが必要です。それがゴルフでもスキーでも同じことだと思います。登山が良い理由は眺めが素晴らしいからです。登山に興味がないとか体力的に難しい場合は観光ヘリコプターや観光気球、展望台などが良いですね!
③ 旅行は出発から終わりまで同じメンバー全員でするものと思い勝ちですが、実は途中で高速鉄道や飛行機などで帰ることも可能なのですね。予定が合わない場合は「途中まで参加!」とか「途中から参加!」場合によっては「初めは一緒に旅行して、途中少しだけ抜けて、終わりの頃にはまた一緒に旅をする。」などということも可能なのですね。
良い旅を!