フランスのおいしいパン その1
今から25年ほど昔にフランスへ旅行したことがありました。建物や絵画、彫刻、エスカルゴなど心に残るものは多数ありました。けれどもその中で一番印象に残ったことがあります。それは「パンがおいしい!」ということでした。
個人旅行だったのでベルサイユ宮殿からパリに戻る途中で少し散策をしてみました。そして、そこにあった普通のパン屋さんでバケットのパンを買いました。いわゆるフランスパンです。フランスパン一本だけの買い物だったので、お店では手で持つところだけを紙で巻いて渡してくれました。それなのでそれ以外はむき出しの状態でした。日本だと何かで完全に覆って渡してくださることが多いので少し驚きました。でもすぐに、「ああこれが映画やテレビの旅行番組などでよく見る、あの光景と同じなんだなあ。」と思いました。あの光景とは紙袋からフランスパンが大きくはみ出している状態の映像です。「ああ、あの光景の仲間なんだなあ!」と幾度も思ったものです。
ルーブル美術館近くの宿に帰ってからパンを輪切りにして現地で調達したバターだけで食べました。本当は焼けばもっとおいしいのでしょうがそれはできませんでしたからそのまま食べたのですが、これが美味だったのです!「ああ、フランスパンはこんなにもおいしいものなんだねえ!」と正直驚きました。最近でこそ日本中どこでも本格的なフランスパンが手に入るようになりましたが、当時は困難でしたからその味に感動したものです。
フランスのおいしいパン その2
帰国するときにシャルルドゴール空港で飛行機の搭乗待ちをしていました。その時、少し小腹がすいたので空港内の小さな売店でクロワッサンとコーヒーを買いました。「空腹」という調味料も効いていたのかもしれませんが、このクロワッサンが超絶美味しかったのです。おそらくバターの含有量が日本の比ではないような気もしますが・・・。
帰国して数年後に、フランス旅行へ行ったことがあるという人にこのことを話してみたら「私もそれ食べたよ。すごくおいしかったよね!」と賛同の声をいただくことができました。
「現地でしか食べられない美味しい食品と出会える!」ということは旅に行く価値の一つであると思います。それは海外でも国内でも同じことですね!また美味しいものと出会いたいものです!
エッフェル塔のサンセットキス
ここでがらっと内容が変わりますが、このお話も同じときにフランスで体験したエピソードです。
パリ市内の観光があまりにも素敵で夢中になりすぎて、エッフェル塔に登ることができたときにはもう夕方になっていました。エレベーターで一番上まで昇ると、そこは展望台になっていました。昼間とはずいぶん異なる冷たい風が吹きぬけて身の引き締まる思いがしました。展望台の外には幅のそれほど広くないテラスがぐるっとめぐらせてありました。そこには思ったよりも多くの人がいたのが印象的でした。
ふと我に返りそこから景色を眺めると、これはすごい!パリの街並みがとても良く見えるのです。セーヌ川やそこにかかる橋もよく見えます。車や木々も模型のように見えます。ただ、夕暮れの景色ですから昼のように鮮やかではないし、夜のように光が美しいわけでもありません。街全体がオレンジ色の夕焼けに染まり、夕日の当たらない部分は灰色に見え始めていました。パリの街も夜に向けて準備をしているようです。
テラスをゆっくりと歩き、時々人の隙間を見つけてはテラスの縁まで行きパリを眺めました。一通り全方位のパリを眺め終えて大満足しました。さてどうしようかな?と思ったのですが、太陽があまりにもきれいだったので眺めていたくなりました。もうあとわずかで夕日が地平線に沈みそうなので日没まではそこに居ようと思いました。暇に任せて辺りを観察していると「おや?」と思いました。そう、辺りにいた人たちはそのほとんどがカップルだったのです。皆、楽しそうに談笑しています。そしていよいよ日没。太陽が本日最後の輝きを放ちながら地平線に沈んで行きます。と、その瞬間突然に静寂が訪れました。なんと、そこにいた全員がキスを始めたのです。私はパートナーと来ているわけではなかったのでキスをする相手がいません。場違いな所に居合わせてしまったと若干の後悔をしながら、ただただ、その光景を呆然と見つめていたのでした。エッフェル塔の天辺で愛しい人と日没と同時にキスをする。それはそれはロマンチックな体験だと思います。もしかしたら永遠の愛と幸せが約束されるのかな?そんな風に思ってしまうほど荘厳な眺めでもありました。
「いつか愛しい人とここでキスをしてやるぞ!」と強く心に誓いました。暮れて行くパリの空と幸せそうな恋人たちを背にその場を後にしました。
その後何年か経って自分の彼女を連れてパリを訪れる機会もあったのですが、なぜかいまだにエッフェル塔でのサンセットキスは実現していません・・・。 う~ん、なんでなんだろう? 「いつかきっと!」 なんてね(笑)
良い旅を!