箱根・思い出のアート 4(旅行 連載小説 短編)

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美術館を見学

ソウタとリサは美術館の庭を歩き始めました。通路以外の場所は芝生で美しく覆われています。秋ですがまだ緑も多く、すがすがしい空気感です。この美術館には120点の名作がありました。次々と彫刻を見ていきます。

具象的なものから抽象的なものまで様々な彫刻が屋外に置いてありました。そのどれもが存在感を放っていました。

その中でも特別な存在感を放っていたのが獰猛な牡牛の彫刻でした。芝生の中で今にも突進し始めそうな様子です。リサはとても気に入ったようでした。

「これすごいね!」

「うん、僕じゃかなわないな。」

「あとでこれスケッチしない?」

「いいねえ、そうしようよ!」

あとでスケッチをする約束をしました。

その後、キュビズムの巨匠の展示館も鑑賞しました。展示されている作品を見ていくうちに、作者がどのようなことに影響を受けたのかよく理解できました。また、初期の作品のデッサン力の緻密さに驚きました。晩年の作品の奔放さもそういう力に裏打ちされたものなのだと解りました。

一気にたくさんの芸術作品を観たので少し疲れました。

コーヒーを飲むことのできる場所を見つけたので二人で入りました。

コーヒーを飲みながら一休みです。

「どの作品もすごいねえ!」

「ええ、エネルギーを感じるわ!」

「作者が創っているときの姿を想像してしまったよ。」

「どんなふうに?」

「一生懸命なんだよね、みんな・・・。」

「そうだよね。」

「リサが絵を描いているときもすごいよ!」

「そう?」

「そうだよ。集中力かな?やっぱり。」

「ありがとう。」

その後、ステンドグラスのタワーに登りました。階段を登っていくと皆の声が反響していたので、二人はそこにある空間を強く意識しました。若干貧血気味のリサはめまいがしてフラッと階段で倒れそうになりました。後ろから登っていたソウタは慌ててリサを支えました。

「平気?」

「うん、平気。少しめまいがしたの・・・。」

「降りようか?」

「ううん、せっかくだから登ろう。」

「無理そうならすぐに言ってね。」

「うん、ありがとう。」

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階段を登りきるとそこはとても高い場所でした。高いところが苦手な人にはちょっと辛いかもしれません。けれどもとても良い眺めでした。周囲の緑の樹々や芝生が良く見えました。少し休んでからゆっくりと降りました。リサがふらついても落ちないようにソウタはリサを支えながら降りました。

それからスケッチをするために獰猛な牡牛の彫刻のところまで戻りました。

ソウタはリサのために1m四方くらいのレジャーシートを敷いてあげました。リサはとても喜んでくれました。二人は離れた場所で描き始めました。

リサは真剣だけれどどこか楽しそうに描いています。

(初めて出会ったときもリサはこんな表情だったなあ。)

1時間ほどで描きあがりました。いつもなら二人でスケッチを見せ合うことが多いのですが、今日はどうしたわけか二人とも相手に見せたがりません。

「それじゃあそろそろ行こうか?」

「うん。」

「どうだった?」

「面白かったよ。牛さん迫力すごかったよね。私が描いていると見るたびに迫ってくるようだったよ。」

「そうだね。僕もそう思ったよ。」

二人は歩き始めました。

「話は変わるんだけどね、ここ、足湯があるみたいなんだよね、私、入ってみたいな。」

「ああ、そうだね。そうだ、確かあっちのほうだったよね。」

足湯に向かいます。

「美術館に足湯って珍しい取り合わせだけど、これだけ歩くと足が疲れるからとても良いのかもしれないね。」

「そうね。」

二人は足湯の場所に着きました。タオルを買って足を出して足湯の縁(ふち)に座ります。42度は少し熱く感じましたが、すぐに慣れました。だんだん気持ちが良くなってきます。

「そうか!ここ箱根だもんね。」

「あははっ。そうね、そうだったわね。温泉地だもんね。足湯があっても不思議じゃないよ!」

しばらく足湯を楽しんだ後、二人は美術館を後にしました。

「ああ、なんかお腹すいたね。」

「私たち、お昼食べてないかも。」

「そうだね。少し遅い時間になっちゃったけど何か食べようか?」

「うん、そうだね。何か食べようね。」

(つづく)

良い旅を!

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