箱根・思い出のアート 2(旅行 連載小説 短編)

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箱根へ出発

土曜日の朝、ソウタとリサは新宿駅に集合しました。

ソウタは白と黒のボーダーのVネックセーター、ダークグレーのジャケット、ボトムスは薄茶色のパンツ、スニーカーといういでたちでした。ソウタとしてはかなり頑張っておしゃれをしました。

リサは ベージュのハイネックに丈の短い黒色のライダージャケット、シフォン素材のオフホワイトのフレアスカート、黒のフェイクレザーアンクルブーツという服装でした。リサも精一杯のおしゃれをしました。

時間ぴったりに二人は新宿の西口に現れました。二人は一泊分の着替えが入ったバッグとスケッチブックを持っていました。

「おはよう!」

「おはよう!」

「待った?」

とリサ。

「全然、僕もちょうど今来たところだよ。」

リサがとても素敵だったのでソウタは見とれてしまいました。

「リサ、とってもおしゃれさんだね!」

「ありがとう! ソウタもなんだかいつもと違って男らしい服ね!」

「ありがとう!」

リサもソウタを暖かいまなざしで見ました。

「じゃあ、行こうか?」

「ええ、行きましょう。」

二人は新宿駅から箱根湯本駅までを直通で結ぶ特急に乗りました。列車の内装は木の部分も多く、高級感があります。いつも都心で乗っている電車とは雰囲気が少し異なります。ソウタはリサに眺めの良い窓側の席を勧めました。間もなく発車のアナウンスが響き、列車は滑らかに走り出しました。二人の後ろの席は空席だったので、二人は少しだけリクライニングシートを倒しました。

特急列車はしばらく地下を走っていましたが、やがて地上に出ました。車窓には都会の建物が次々と流れて行きます。

リサは移り行く景色を楽しそうに眺めていました。

ソウタはリサがとても可愛らしく、いつもより素敵に見えたので見とれてしまいました。

しばらく走っても建物が多いことは変わることがなく、似たような感じの景色が続きます。

リサはソウタに言いました。

「のど渇いたね・・・。」

「そうだね、車内販売が来たら何か飲もうか?」

「うん、そうだね。」

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しばらくすると車内販売のワゴンが現れました。ソウタとリサは緑茶を頼みました。サンドイッチとお菓子も少し買いました。

やがて田園風景や里山も見えることがありました。ところどころ大きな都市があり、建物が多く見られました。

「ずいぶん遠くまで来たんだけれど、この辺りも都心への通勤圏内らしいよ。」

「毎日通うのはたいへんそうね。」

「それがそうでもないらしいんだよ。」

「本当?」

「うん、始発だったりすると必ず座ることができるので、膝の上に置いた鞄を机代わりにして資格試験の勉強をしたり、読書やゲーム、ネットサーフィン、音楽鑑賞など趣味の時間に使ったりもできるらしいよ。」

「すごいねえ、工夫してるんだね。」

サンドイッチやお菓子をつまみながら二人はいろいろな話をしました。

約1時間30分で箱根湯本に到着しました。アナウンスが流れます。

「箱根湯本に到着です。箱根登山鉄道はお乗換えです。皆様のまたのご利用をお待ちしております。箱根でのひととき、どうぞごゆっくりとお過ごしください
どうぞこの先もお気をつけてお出かけください。」

とても丁寧なアナウンスでした。

ソウタとリサはリクライニングシートを正しい位置に戻し、お菓子やサンドイッチの空き箱や包み紙など自分達のゴミをリサが持ってきたレジ袋に入れてソウタが持ちました。荷物とスケッチブックを持ち降車します。その際、車両の出口付近に車内のゴミ箱があったのでそこにゴミを捨てました。

駅を出るとそこは温泉のある観光地という雰囲気がありました。看板や走っている送迎の車などに温泉宿の名称が書いてあったりするためかもしれません。特に硫黄の香りなどは感じませんでした。宿はソウタが箱根湯本に取っておいたのでチェックインをするためにそちらに向かいます。

「歩くと10分くらいかかるらしいんだよね。タクシーに乗ろうか?」

「ううん。10分なら歩くの平気だよ。」

「そう?じゃあ歩こうか?」

「うん。私、歩くの好きだよ。」

「うん。僕も好きだよ。」

二人は太陽の光が暖かく降り注ぐ中を、バッグとスケッチブックを持って歩き始めました。

(つづく)

良い旅を!

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