宿にて
一日中ハードスケジュールだったので三人はすぐにそれぞれの部屋に帰り、シャワーを浴びると眠ってしまいました。
帰国日の朝
モナとメイは朝、少しだけ寝坊をしました。慌てて支度をすると朝食を食べるためにエレベーターで降りました。もうルリは座って食べ始めるところでした。笑顔で手を振ると手招きしています。
「おはよう、みなさん!」
「おはよう」
「おはよう」
モナとメイはおかゆとおかず、それにジャスミン茶をトレイに載せてルリの前に座りました。
「昨日はきつかったね。」 とモナ。
「でも楽しかったよ!」
「そうですね、茶器のセットがまだ買えていませんがよかったです。」
「あはは、それね!」とメイ。
「今日買うことができるといいね!」
「はいっ!」
しばらく三人はもぐもぐと食べていましたが三人とも何かを言いたそうです。すると三人が同時に話し出そうとしました。
「あのう」「あのね」「えーと」
「あれ? (笑) 何か同時だね。」 とメイ。
「そうね。」
「そうなってしまいましたね。」
「じゃあ、私から言うね、旅の間いつ言い出そうかと思ってたんだけどなかなか言えなくてね、最終日になっちゃったんだよねこれが・・・。」 とメイが話し始めました。
「うん。」 とモナ。
メイが続けます。
「実はね、私もね、結婚が決まっているのよね。」
「本当?おめでとう!良かったね!」
「おめでとうございます!」
「でもね彼、北海道の人なの。」
「北海道? 遠いよねえ!」
「そうなのよ。それで私も北海道に住むことになるのね。だからもうモナとは同じ街にはいられなくなるの。ごめんね。」
「いいよ、それは、そうかあ、そうだったんだね。なかなか言い出せなかったんだね。」
「そうなのよ。」
「でもそれは私も同じ、私も家族が全員で父の故郷の福岡に引っ越すことになっているの。だから私も同じ、ごめんね。」
「そうだったの? 随分お互い遠くなっちゃうのね。」
「そうね、なんだかさみしいよ。」
「まさかルイは引っ越さないよね?」
「それが・・・。私はこの旅で皆さんと初めて出会いましたから申し上げてもあまり意味がないかもしれませんが、私も、もし彼と結婚することになった場合には彼がホンコンに転勤が決まっているので一緒に行くことになると思います。」
「そうかあ、三人ともバラバラに引っ越して行くのかあ・・・。」
「やっぱりさみしいよねえ。」
「そうですねえ。」
出発時間が近くなってきたので急いで食べ終わると三人は朝食会場を後にしました。
ガイドのワンさんはいつものように笑顔で迎えてくれました。
「今日はお買い物のできるお店に一ヶ所だけ寄って、後は空港へ皆様をお送りいたします。」
マイクロバスに乗ると台北市内を走って行きます。間もなくお土産屋さんに着きました。
ブランド物から台湾土産までなんでも揃っているお店でした。
それぞれの家族や友人、勤め先などへのお土産を買い込み、さらにモナはTシャツを、メイは自撮り棒を、ルリは念願の茶器セットをそれぞれ購入しました。入り口で皆が集まって来るのを待っているとガイドのワンさんが近づいてきました。
「皆さんは台湾の天然石を買わないのですか?」
「全く考えていませんでした。」
「皆さん素敵なレディーです。翡翠は大人の石ですよ。きっととてもお似合いになると思いますよ。」
「素敵な」「大人の」「お似合いに」の言葉にそれぞれが反応してしまい、まったく買う予定はなかったのですが、三人は売り場に戻ってみました。
「翡翠の色って神秘的ね!」
「翡翠って生命力を感じるわ!」
「触れてみたい感じがしますよ!」
あっという間に翡翠のとりこになってしまいました。結局、モナはネックレスを、メイはイヤリングを、ルリはブレスレットをそれぞれ買いました。
「結局、三人とも翡翠製品を買っちゃったね。」
「ちょっと奮発しちゃったよ。」
「でもきれいですよ。」
お土産さんを後に一路空港へ向かいます。ガイドのワンさんに別れを告げてチェックインします。検疫、税関、出国審査を無事に済ませると三人は免税店で買い物をして帰りの便に搭乗しました。
機内で
三人は帰りも並びの席でした。飛行機が着陸態勢に入ったとき、モナが言いました。
「メイ、今思いついたんだけど、年に一回位なら会えるんじゃないかしら?」
「あっ、それいい! 年一回なら会えそうだよ。」
「じゃあ決まり、まずはそれぞれの家を訪ねるというのはどう?」
「旅行のようでいいね!」
「九州に北海道に香港!」
「えっ? 私もいいんですか?」
「もし、お嫌でなければ!」
「そんな、嬉しいですわ!」
「3年間はそれぞれの家を訪ねて、そのあとは?」
「普通に旅行でいいんじゃない?」
「じゃあ、今回の旅行が第一回だったってことでどうかな?」
「賛成!」「賛成!」
軽やかで明るい笑い声の三人は無事に帰国できたのでした!
(了)
良い旅を!