グアム・デイズ ⑩(旅行 連載小説 短編)

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エピローグ

後日、マナトが勤めている会社の業務が終わり、青いネクタイに灰色のスーツ姿でマナトがビルを出たところで、ミウの家の執事が現れました。にこやかに挨拶を交わしました。

「こんばんわ、マナトさま。」

「こんばんわ、執事さん。」

「先日グアムでお助けいただいたお礼に、晩餐をさしあげたいとミウお嬢様がおっしゃいましたので、お迎えに上がりました。」

「本当ですか? ミウさんが・・・。 そうですか。」

「マナトさまは、この後ご予定がお有りですか?」

「いいえ、喜んで、参ります。」

執事と、先日乗せてもらった運転手付きの車に乗って都内へ向かいます。

古い歴史を感じさせる建物に着きました。そこはとても有名なレストランでした。

「ここは確か、とても高級なレストランですよね。ディナーだと大変高額だって聞いた記憶がありますよ。」

「ええ、これがミウお嬢様のお気持ちです。お礼の夕食ですから気楽に召し上がっていただいて楽しくお過ごしになられますとよろしいかと存じます。今宵はお二人だけのためのレストランです。グアムのときと同じ感じでお嬢様に接していただけますと私どもも嬉しく存じます。」

「はい、そういたします。」

どうやら、ミウと執事で高級レストランをミウとマナト二人のために貸しきってしまったようです。

「ではこちらへどうぞ。」

レストランに入ると清楚な青いイブニングドレス姿のミウが立っていました。恋人岬で見たグアムの海の色を思わせるドレスでした。ミウはグアムで見たときよりも大人びて見えてマナトは少しドキッとしました。

「こんばんわ!ミウさん!またお会いできてうれしいです!」

「こんばんわ!今宵はお越しくださりありがとうございます!私もマナトさんにお会いできてうれしいです!」

「ドレスすてきですね、グアムの海を思い出します。」

「ありがとうございます。私もグアムの海が懐かしくてこのドレスを新調いたしました。」

マナトはミウと二人分の食器類がセットされたテーブルに近づきました。

「ミウさんどうぞおかけください!」

マナトはテーブルのイスを引いてミウに勧めました。

「ありがとうございます。」

二人はイスに座りました。会話を盛り上げるような静かで上品な音楽が聞こえています。

最高級のディナーはマナトが口にしたことがないものばかりで、そのおいしさにその都度驚かされるマナトでした。そのたびにミウは優しく微笑むのでした。食事中に二人はグアムでの思い出話をして大いに盛り上がりました。食後のコーヒーを飲みながらミウは話します。

「マナトさん!日本に帰って友人に話したら解ったんですけれど、グアム島の恋人岬で鐘を鳴らした二人は永遠に結ばれるんだそうですよ。」

「それじゃあ僕とミウさんは永遠に?」

「はいっ!」

ミウは静かに頷き瞬きを一回しました。そして顔を上げて微笑んでマナトを見つめました。

マナトも穏やかに見つめます。

「ミウさん!また僕と会っていただけますか?」

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「はいっ!私もマナトさんとまた会いたいです!」

「ありがとう! ミウさん!」

「というか、マナトさんと毎日会いたいです。」

「毎日ですか?」

「はい、毎日一緒にいられたら嬉しいです!」

「そうですね、それいいですね!」

室内楽団は生演奏でバロック音楽を演奏し続けていました。その静かな旋律が徐々に盛り上がっていくレストランの中、お互いに手を取り合い微笑んで見詰め合うマナトとミウの二人がいました。

(了)

 

あとがき

「海外でトラブルに巻き込まれて出会う二人」というロマンチックな設定で書いていますが、これはあくまでも物語だから成立していることです。実際には海外でトラブルに遭うとシャレになりません。基本的には準備を怠りなくして、可能な限りトラブルは避けることが大事です。特にパスポート(ビザ含む)、クレジットカード、航空券は基本的には肌身離さず持っていることが大切です。クレジットカードは2枚以上あったほうが良いです。更に現金(現地で通用するドルなどの基軸通貨・現地通貨)も大事です。現実的な話ですがそうしたものが自分を守ってくれるのです。

また、旅行の準備の基本は登山の準備と同じで最悪の状況を想像してそれに対処するためのものをすべてリストアップすることから始めます。その後で重量を軽減するために減らすことができるものは減らしていくのです。つまり旅行の準備は足し算ではなく引き算なのだと思います。そうすれば落ちもありません。物語ではマナトを少しだけスタイリッシュにするために、彼は機内持ち込みできるサイズのスーツケースを持ち歩いていることになっています。実際に旅なれた人はそうしている人も多いのですが、実際には私は機内預けをする大きなスーツケースで重量を気にしながら旅行しています(笑) 旅の荷物づくりはやはり奥が深そうですね。

私の個人的な体験では海外で寄ってくる日本人は何か下心のある人が多かったです。ロマンチックではないんですねこれが・・・。また、知らない人から飲み物を勧められたら飲まないほうが安全です。マナトみたいに純粋でお人よしな人は実際にはほとんどいません。また、私たちが海外でミウのようなお金持ちと出会うこともほとんどありません。

ただ、現地に行かないと見ることのできない絶景や空気感、現地の食べ物の味というものは必ずあります。それを体験することはとても価値があります。後日、ご自宅で旅番組を見るときに実際に行ったことのある場所だと実際に見た感じ、街の雰囲気、味、香りなどを補ってみることができるので楽しさが倍増します。

それから海外に行くと脳がリフレッシュされるような気がします。日常の中では決まった脳の使い方しかしていません。ところが海外に行くとフル回転で脳が働きます。旅はちょっとした冒険なのです。また、旅の内容によっては運動不足も解消されます。「海外旅行はスポーツ!」でもあるのだと思います。

良い旅を!

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