豪華な朝食
朝食会場に入りました。朝食サービスの時間内ではありましたが、あと30分で終わるころでした。もう食べ終わってコーヒー片手に歓談している人がほとんどでした。結構高額な朝食なので元をとれるようにたくさん食べることにしました。和食もあって迷ったのですが、今日は洋風に食べたいなと思いました。そこで自家製パンとデニッシュ、シリアル、フレッシュサラダ、ハム、焼きスパム、ソーセージ、ベーコン、ヨーグルト、ゆで卵、フレッシュフルーツ、ワッフルを食べました。飲み物はミルク、フルーツジュース、食後にはホットコーヒーをゆっくりと飲みました。朝食でこんなに食べたことはありません。大満足です。
(さて、何にも予定を入れていないので今日はどうしようかなあ。まだ見たいものもいろいろあるし、食べたいものもあるよなあ。まあ気楽な一人旅、のんびりと行きますか~。)
などと考えていました。
マナトがグアムでしてみたかったことの中には「買い物」という項目がありました。自分の部屋に戻ると昨日と同じようなカジュアルな服装に着替えました。そして、出かけることにしました。
買い物へ
乗り物に乗るのも良いですが、少し歩いてみたくなりました。そこでショッピングセンターまで歩いてみることにしました。海沿いの道をゆっくりと歩きます。午前中なのにとても蒸し暑い日でした。途中にコンビニエンスストアがありました。喉がかわいたのでミネラルウォーターを一本買いました。店内はとても涼しくて快適だったのですが、お店を出るとまた暑い世界が待っていました。ミネラルウォーターを片手に更に歩きます。30分ほど歩いてショッピングセンターに着きました。そこはブランドショップがたくさんありました。本来、サキさんと一緒ならサキさんに様々なブランドショップを連れまわされているところでした。きっとそれも楽しかったでしょう。でも今日は自分一人だけです。なので紳士ものを置いてあるお店にしか興味がありません。とてもいいなと思ったシャツがあったのですが値札を見てびっくり、そっと元の場所に戻しました。その後はウインドウショッピング状態になってしまいました。それでもどうしても欲しくなってしまったコイン入れは奮発して購入することを決めました。店員さんはとても笑顔で応対してくれて、きれいに包装してくれました。
突然の出来事
マナトはお店をご機嫌で出てきました。やはり欲しいものを買うことができるとうれしいものです。さて次はどうしようかな?と考えながらゆっくりと歩き初めました。
しばらく歩いて行くと、何か大きな声がしました。どうやら前方でもめている様子です。トラブルはいつでも要領よくさけてきたマナトですが、そこを通らないと外に出られないのでそのまま歩いて行きます。
どうやらもめているのは若い色白の日本人女性と観光客風の日本人男性のようでした。女性は必死の形相です。手には紙袋をさげています。
(痴話げんかかな?)
「お願いします。お金を貸してください。必ずお返ししますから!」
「しつこいなあ、いいかげんにしろよな!」
女の子を手でなぎ払う様にしてその男性は去っていきました。マナトは嫌な予感がしました。
(彼女こっちへやって来る?)
その若い女性はマナトに走りよります。あっという間にマナトは両方の手首を彼女につかまれてしまいました。彼女があまりにも強く手首をつかむものだから少し痛みを覚えました。
「あのっ、助けてください!」
( 「助けてください!」って言われても、この後、さっきの人に言ったみたいに「お金貸して!」とか言うんだよね。寸借詐欺じゃないのか?それ!こっちが助けてくださいだよ!)
「私、困ってるんです。」
「急に言われてもちょっと・・・。ちょっと放してください。」
「私荷物を全部無くしてしまったんです。」
「えっ?」
「トイレで無くしてしまって、どうしたらいいのか困っていて、とりあえず家に電話をかけたいのでお金をを貸してください。」
(荷物を無くしたって言っても手に紙袋持ってるじゃないか・・・。)
彼女は一生懸命マナトに説明しています。彼女は目の前にいるのに、彼女の声がだんだん遠くなっていきます。その時マナトは数年ほど前に経験したこの状況によく似た出来事を思い出していたのです。
それは秋の暖かい午後のことでした。新宿を歩いていたら秋田出身だと言う完璧な標準語を話す小麦色に日焼けした20歳くらいの女性に声をかけられたのです。お財布をなくして帰れないので3,000円貸してくださいという話でした。必ず返すと言われました。でも、さすがに3,000円では秋田まで行けるはずがないと思いました。それに訛り(なまり)がまったくないのもおかしいです。それで寸借詐欺だと思ったのです。「警察に行けばお金を貸してくれるかもしれないよ。一緒に行こう。」と言ったらその彼女は走って逃げて行ったのでした。
そこまで思い出して、マナトはふっと我に返りました。マナトの手首をつかんだままの彼女はまだそのままマナトに話しかけ続けていました。
「・・・だからお金が必要なんです。」
とっさに
「警察に一緒に行く?」
とマナトは言っていました。こう言えばもしかしたら、この彼女もあのときの彼女と同じように走って逃げてくれるかもしれないという淡い期待をいだいて・・・。
すると彼女は
「そっか、警察か、それいいね!うれしい、ありがとう!すぐに行きましょう!」
と立て続けに言ってマナトの手を片方離すと、ショッピングセンターの外に向かって走り出しました。
(つづく)
良い旅を!