グアム・デイズ ④(旅行 連載小説 短編)

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観光に出発!

連泊予定なので荷物はほとんど部屋に置いていくのですが、今日は島一日観光で一日中部屋にはいません。ベッドメイクはお願いするので、ベッドサイドに置いたチップ以外の、テ-ブルの上などに置いた自分の物はすべてスーツケースに入れて鍵をかけました。
麻の白い半袖シャツにボトムスは薄いオレンジ色のハーフパンツ、白いローファーを履いて出かけます。パスポートは貴重品入れに入れてシャツの下に隠して持ちました。中折れの財布にクレジットカードを入れてハーフパンツのポケットに入れます。手数料は少しかかるけれど、宿で両替してくれるというので日本円をドルに両替してもらいました。それからツバの短い麦藁帽子と小さなデジタルカメラも持ちました。

さあ出かけます。ツアーの車はマナトの宿までお迎えに来てくれるということですので便利です。昨日は飛行機の中で、ガイドブックに書いてある行きたいところの項目に印をたくさん付けました。半分くらいはこのツアーに参加することで達成できそうです。意外に盛りだくさんなのです。

一人参加はさすがにマナトだけでした。ツアーの参加者は圧倒的に家族連れが多いようでした。さあ観光の始まりです。

ソレダット砦

ソレダット砦(とりで)はグアム島南部のウマタック村にあります。スペインがグアムを統治していた時代に海賊などから国や船を守っていた砦です。に1802年に築かれました。ウマタック湾を一望できるように建てられています。砦は白い石組みの塀に囲まれています。今でも当時の砲台や弾薬庫の跡などが残っています。ウマタック村は交易で栄えました。ウマタック湾は1521年に探検家のマゼランが上陸したことでも有名です。夕日の美しい名所として知られています。

マナトはソレダット砦からの眺めの良さに驚きました。青い海と湾や村が良く見えます。太陽がとてもまぶしいです。大砲は勇ましいけれどどこか物悲しい感じがしました。

 タロフォフォ

グアムの大自然に触れることができる場所です。タロフォフォ川の支流にタロフォフォの滝はあります。高さ9mでグアムでは一番大きな滝です。他に射撃場やゴルフ場、ロープウエイなどもあるようですが。ツアーでは周りません

マナトは自然豊かなところだなあと思いました。日差しが強くなってきました。

 スペイン古橋(車窓)

スペインが統治していた1785年に架けられた小さな橋です。長さ約11m幅約4mの小さな眼鏡橋です。アメリカ合衆国史跡記念物です。タリファク橋が本来の名称です。ウマタック村と首都のハガニアを結ぶ道に架かっていました。当時は木の橋でしたが1800年代に石灰岩で作り直されています。

マナトは「小さい橋だなあ!」と思ったけれど、そこを通った人たちのことに思いをはせました。

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その他の歴史的なスポット

グアムはリゾートなので楽しいところだけれど、過去の歴史には重いものがあり、そういう歴史に関係する場所の見学が4ヶ所ほどありました。うち一ヶ所は車窓観光でした。マナトは厳粛な気持ちで見学しました。比較的穏やかな今の時代に生きていられることは本当にありがたいことなんだなあ。と感じることができました。
 

ツアーで見学した場所は7ヶ所でした。 そのうち車窓観光は2ヶ所でした。

誰とも話をしませんでしたが、それでもツアーに参加している間はすべてを忘れて楽しむことができました。その晩はとても深く眠ることができました。

翌日はのんびりしようと思って少し朝寝坊をしました。なにせ予定が何もないのです。

お腹がすいたので、レストランで朝食を取ろうと思い、部屋を出てエレベーターに乗りました。エレベーターは下がり始めます。

途中でエレベーターが止まり扉が開きました。すると、おととい、このエレベーターで出会った「海が好き!」と話してくれたきれいなお姉さんが立っていました。彼女は、ずいぶん使い込んだ感じのするスーツケースを持っていました。マナトはお姉さんが相当旅慣れている人なのかな?と思いましたが、それと同時にもう帰ってしまうのかな?と少し寂しくも思ってしまいました。

「おはようございます!」

「あはっ、おはよう!」

「お帰りですか?」

「そうだよ、素直君が口説きに来ないもんだからもう帰るの!」

「す、すみません、僕・・・。」

「冗談よ、あさってから仕事だからさすがにもう帰らないとねえ・・・。」

「ああっ、そうなんですかぁ。」

「君のせいじゃないから気にしないでよね。」

「はい。」

「でも、君、少しだけいい顔になったね!もう大丈夫かな?」

「これでもまだ落ち込んでるんですよ。」

「うん、わかるよ、でも後は時間が解決するかな?」

「ありがとうございます。」

エレベーターが開きました。

「どうぞお先に!」

マナトは「開く」に相当するボタンを押しながら言いました。

「ありがとう、その調子よ!」

「はいっ!ありがとうございます!」

「じゃあね!あんまり無茶しちゃだめよ。」

「はい。」

「あっ、それと一つアドバイス。」

「なんですか?」

「日焼け止めは使ったほうがいいよ今からでも!」

「えっ?判るんですか?」

「だって、お鼻とかほほ骨のあたりが赤くなってるよ。」

「そうですか。ちょっと気にしてませんでした。ありがとうございます。」

「じゃあね!バイバイ!」

「はい、お気をつけて!」

彼女はにこやかに軽く手を振るとスーツケースをガラガラと引っ張ってフロントのほうへ歩いて行きました。彼女の後姿は自信にあふれていて格好良かったです。

(やっぱりあれかな? 恋人といることはもちろん大事だけれど、その前に自分がしっかりとした人間である必要があるのかな? 一人でも力強く生きるって大事なことなのかな?)

彼女と出会って何かを感じることができたマナトでした。

(つづく)

良い旅を!

 

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