グアム・デイズ ②(旅行 連載小説 短編)

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グアム到着

マナトは飛行機に乗っている間、ガイドブックで自分が観たいところや体験してみたいこと、食べたいものなどの全部に印を付けました。

(サキさんが僕と一緒に来なかったことを後悔するくらい、片っ端から参加して目一杯、楽しい思いをしてやるぞ!)

不思議な前向きさが出てきました。これを世間一般では「から元気」と言います。

そうこうしているうちにグアム国際空港に着きました、ESTAを事前に取っておいたので入国手続きなどはスムーズでした。

グアムは日本の南、約2,500キロメートルの太平洋上に浮かぶアメリカ合衆国に属する島です。言葉は基本英語ですが、さすがに観光地とあって、日本語を話せる人も多いようです。時差は1時間です。通貨は米ドルですが、お店では日本円を受け入れてくれる場合もあるようです。

空港から送迎の車に乗って、宿に着きました。大きな建物で庭には大きなプ-ルがあります。プールサイドには水に濡れた体のまま寝そべるように座っていいリラックスできる白いイスとパラソルがありました。典型的なリゾートのイメージです。その他に館内にはエレベーターやバルコニー、スパ、フィットネスセンター、会議室、宴会場、ビジネスセンター、レストランなどがあります。サービスとしてはルームサービス、ランドリーサービスなどがあるようです。また、日本語スタッフもいるようなので安心です。宿がすばらしければすばらしいほど一人で泊まるのはかなり惨めだとマナトは思いました。

旅行社によって宿はすでに2名泊が1名泊に変更済みでした。ツインの部屋がシングルになっているはずでした。ところがたまたまシングルの部屋が取れなかったらしくてグレードアップされてダブルベッドの部屋になっていました。

部屋に入るとその開放感と豪華さがすばらしすぎます。設備もいろいろ付いていました。テレビ、電話、エアコン、電気湯沸しポット、冷蔵庫、セーフティーボックス、シャワー、バスタブ、ドライヤー、コンセント、アイロン、インターネット回線、タオルなどがありました。アメニティーとして歯ブラシ、石鹸、シャンプーが付いていました。特筆すべきはコーヒーメーカーがあったことです。

(まあ、広いからラッキーなのかな、のびのび一人で寝てやるぞ!)

ホテルのレストランで晩ご飯を食べました。日本食も食べられるようなので長期滞在の場合は良さそうでした。とりあえず日本的でないものを選びたかったので海鮮と肉の洋食メニューにしました。一人で食べているのは自分だけかな?と思って周囲を見回してみると、一人で食べている日本人が何人かいました。

( 仕事で来ている人たちなのかな? )

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夕食はとても美味しく、一人でいることを忘れてしまうほどでした。夕食後、デザートを食べ、コーヒーを飲み、おなかが少し落ち着いたので部屋に帰ることにしました。エレベーターを待っていると、さっきレストランで一人で食べていた日本人のお姉さんがやってきてマナトの隣に立ちました。どうやらエレベーターを待っているようでした。小麦色に日焼けしたスポーティーなスタイルで、大きな明るい瞳の美人という印象でした。花にたとえるならヒマワリのような感じです。純粋に彼女がグアムへ来た理由に興味があったので気楽に声をかけてみました。

「こんばんわ!」

「こんばんわ!」

「グアムへはお仕事でお越しですか?」

「まさか、遊びよ、海が好きなので。」

「おひとりでですか?」

「ええ、でも口説いてもだめよ。私の恋人は海だから・・・(笑)」

「はい、口説きません。」

「素直なのねえ、さえない顔して失恋でもしたの?」

「えっ?判るんですか?」

びっくりしたように聞き返します。

「えっ?ほんとに失恋だったの?」

「はい・・・。」

「こっちがびっくりだわ、ちょっとかまかけただけよ。」

「そうなんですか?」

「エレベーター来たわよ。」

「はい。」

二人はエレベーターに乗りました。

「何階ですか?」

「いいわよ、自分で押すから。」

「はい・・・。」

エレベーターが動き始めました。

「口説いたらいいじゃない。」

「ええっ?いいんですか?」

「私じゃなくてこの辺にいる皆を。数打てば当たるってのは本当よ。」

「いいんですか?」

「それはあなた次第でしょう?」

「はあ。」

「でも気をつけなさいよ。地元の娘の振りをしている外国人には・・・。」

「どうしてですか?」

「彼女たちと関わるとロクなことがないから。」

「はい、気をつけます。」

「やっぱり素直ね。きっといい恋人ができるよ!」

ドアが開きました。

「じゃあね、素直さん、頑張ってね!」

ウインクをしながら親指を立てる仕草をして笑顔で彼女は降りていきました。

(頑張ってねって言われても・・・。)

少し考え込んでいると。エレベーターはマナトの部屋がある階に着きました。エレベーターを降りてからも廊下で少し立ち止まって考え込んでしまいました。

(さっきのお姉さんは一人で観光に来ているのにちっとも寂しそうじゃなかったなあ。というかむしろ生き生きしていたよなあ。海が好きだって言ってたっけ。)

部屋に帰ってきました。静かです。靴を脱いでベッドに大の字になりました。

(僕はいったい何が好きなんだろう?)

おなかも一杯なのでだんだん眠くなってきました。

(歯磨きしなくちゃ・・・。)

いつのまにかウトウトしはじめ、そのまま深い眠りに落ちてしまいました。

(つづく)

良い旅を!

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