欧州ミュージアム巡りの旅 36 (旅行連載小説短編) 

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( ※ 写真はイメージです。)

パリ最後の晩御飯

「さっぱりした日本食っぽいものを食べたいなあ。」

「じゃあなにかさわやかなものを買ってくるね。」

「僕も行くよ、一日寝ていたから少し歩きたいなあ。」

「大丈夫?」

「うん、ほらこのとおり!」

サブローは少し屈伸をして見せました。

「じゃあ、行きましょうか?」

昼間歩いた時に100メートルくらいのところにお寿司屋さんがあったのを思い出しました。そこならお店はすぐ近くなので大丈夫だろうとチエコは思いました。

「暖かくして行きましょうね。」

「さっそく買ってもらったフリースを着ていくよ。」

サブローはいつもの服装に加えてフリースを着て、さらにコートを着ました。

「ああ、これは暖かいね。」

「ああ、良かった。」

二人で部屋をでました。宿の前からロンバール通り行き、一本目を右折、サン・ドニ通りを行き一本目の角にそのお店はありました。宿を出て少し歩いただけで到着しました。

およそ日本のお寿司屋さんという感じではありません。洋食が出てきそうなおしゃれなお店です。

「これはきっと日本のお寿司とはだいぶ違うんだろうね・・・。」

サブローは少しがっかりした声で言いました。けれどもこれから他のお店を探すのは病み上がりのサブローには無理だと思ったのでチエコは強くお店に入ることを勧めました。

「入りましょう!とにかく入りましょう!」

「ああ、そうだね。」

お寿司、巻きずし、お刺身、焼き鳥、枝豆、サラダ、スープがあるようです。舟盛りもできるようです。品数も多いお店です。外観とは大違いで明らかに日本のお寿司でした。かなり高額でしたがお寿司を頼みました。マグロ、サーモン、イクラ、タコ、エビ、アボガトを2貫ずつ頼みました。二人で一貫ずつ分けて食べます。とてもネタが新鮮でおいしかったのでサブローはとてもうれしそうでした。これで二人で4,000円くらいでした。

「日本でも回らないお寿司屋さんならそのくらいするよね。パリでこれだけのものが食べられるのなら私は大満足ですよ。」

「そう、良かったわ、じゃ、帰りましょうか?」

「うん、ごちそう様。」

「ごちそう様。」

会計を済ませるとそのまま宿の部屋に戻りました。

「お腹が冷えちゃったわ、カップスープを飲みましょうね。」

「そうだね、それいいね。」

二人で暖かいカップスープを飲みました。サブローは処方されたものを服用するのを忘れませんでした。

「ほっとするね。」

「そうね、ほっとするわ。」

「ごめんね、すっかり一日看病させてしまったね。」

「ううん。あなたが元気になって良かったわ。お寿司も食べられたし。」

「明日はもう帰りの飛行機だね。」

「そうね、あっという間だったわね。」

「うん。そうだ、宿の空港送迎サービスの確認をした方がいいかな?」

「そうねフロントに行ってみましょう。」

二人で部屋を出てフロントに行くと確認はすぐに取れました。費用はすでに支払ってあるので安心です。朝、8時30分に宿を出発するようです。これで明日は空港まで送ってもらえそうです。

部屋に戻ると暖かい紅茶をいれました。デザート代わりにゼリー、キャラメル、チョコレートも食べます。

入浴を済ませてから、病み上がりですがサブローもチエコと一緒に帰国準備のためにそれぞれのスーツケースや機内持ち込み荷物、貴重品入れなどの確認と整理を行いました。パスポートと航空券も確認しました。

その晩は二人とも穏やかに眠ることができました。
 

シャルルドゴール空港から日本へ帰る!

朝、7時に起きるといつでも出発できる状態にしておいてから部屋で簡単な朝食を摂ります。紅茶を飲みながら買っておいたやわらかいパンとチョコレートを二人で分けて食べます。甘くておいしいとチエコは思いました。

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ミネラルウオーターもスポーツドリンクも飲み切ることができました。

もしもミネラルウオーターのペットボトルなどを持っている場合は空港での保安検査前に飲み切らなければなりません。意外とたいへんな場合もあるので飲み切ることができて良かったです。空港では暖かいココアなどを買って飲むのも良いものです。

さあ、いつでも出発できる状態になりました。

8時10分には部屋の忘れ物を確認してから部屋に「どうもありがとう、お世話になりました。」と二人であいさつをしてから部屋を出ました。

二人は一階までスーツケースなど荷物をすべて持って降りました。チェックアウトの手続きも無事済みました。

8時20分には車がやってきました。その日は乗るのが二人だけだったようで二人を乗せるとすぐに出発してくれました。1時間ほどでシャルルドゴール空港に到着しました。スーツケースを降ろしてくれたのでチップを渡しました。運転手さんは笑顔で手を振ると走り去って行きました。

航空会社でチェックインをしてスーツケースを預けます。その後、保安検査を受けました。11時00分頃に制限区域に入ることができました。30分ほど免税店を見ました。チエコはペアのコーヒーカップを買いました。サブローはエッフェル塔の小さな金属製の飾り物を買いました。

「フランスともこれでお別れだね。」

「ちょっと寂しいわね。」

「でも日本の暮らしも恋しいよ。」

「早く帰りたいわね。」

搭乗30分前には搭乗口に移動しました。搭乗する飛行機は途中モスクワを経由して成田へ行く飛行機です。

時間通りに搭乗しました。二人を乗せた飛行機は12:00にシャルルドゴール空港(CDG)を飛び立ちました。3時間半ほど飛ぶと17時20分にはシェレメーチエヴォ国際空港(SVO)に着陸しました。

チエコは思いました。

(時間の表示は飛行時間と時差の関係があるので理解するのが難しいなあ。)

ここで飛行機を乗り換えます。手続きや保安検査をすませるのに1時間ほどかかりました。出発までのわずかな時間で空港内のお店でボルシチを食べました。

「暖かいね。」

「ええ、とてもおいしいわ。」

二人は搭乗口に30分前には行きました。結局滞在時間は2時間40分ほどでした。20時10分には離陸しました。その後9時間20分ほど飛行して成田空港(NRT)には翌日の11:30分に到着しました。

機体から降りて、機内預け荷物のターンテーブルから二人のスーツケースを無事にピックアップしました。

サブローは平熱を維持していましたしすっかり体調も回復していましたから検疫も大丈夫でした。税関では申告するものも特にありませんでした。入国審査も問題なくクリアして日本に入国できました。

「帰ってきたね。」

「ええ、帰ってきたわ。」

スーツケースは家まで届けてもらえるように空港で手続きをしました。

二人はその後機内持ち込み用のバッグだけを持って移動しました。特急列車を乗り継いで八王子駅まで戻りました。駅から自宅まではタクシーを使いました。ようやく自宅まで帰りつきました。家は健在で施錠も万全でした。

「ご近所におみやげを配るのは明日にしようか?」

「そうね、ちょっと疲れちゃったものね。その方がいいわよね。」

「うん。」

サブローはさっそく飾り棚の上にエッフェル塔の模型を置きました。

チエコはペアのコーヒーカップを洗ってからコーヒーをいれました。

「あなた、コーヒーどうぞ。」

「ああ、ありがとう。いいねえ!このカップ!」

「ありがとう、買って良かったわ。それにしても、ああ、やっぱり家が一番ね。」

「そうだね、でも今回の旅は楽しかったね。」

「ええ、博物館や美術館をしっかり見ることができましたから。」

「また行きたい?」

「ええ。あなたは?」

「また行きたいと思うよ。君と一緒にね!」

にこやかに言うサブローを見てチエコはうれしくなりました。

旅行前には会話が続かなかったし、表情も乏しくなってきていたサブローがこんなに元気になったことがうれしかったのです。どうやら、サブローは旅行好きだったようです。

(もしかしたら私たちには旅行が必要なのかもしれない!)

そうチエコは思いました。

(完)

良い旅を!

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