欧州ミュージアム巡りの旅 24 (旅行連載小説短編)

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※ 写真はイメージです。

パリ 二日目のお昼

チエコとサブローは見たいものを目掛けて移動し、お目当てのものを見てから周囲の物も興味があれば見るというスタイルで見学していました。素早く見学できそうに見えて、二人は意外にも長い時間見学していました。そのためエジプトとギリシアの展示室を見終わったときには、もうランチタイムを過ぎていました。

「あなた、おなか空かない?」

「そうだね、思いがけず時間が経っていたんだね。」

「お昼ご飯にしましょうか?」

「そうだね。」

「いったんルーブル美術館を出ないとダメかしら?」

「いや、中にも食べるところはあるようだよ。一度ルーブルから出ると保安検査をまた受けなければならないので時間がもったいないよね。」

二人はルーブル美術館の中でお昼を食べることにしました。

混んでいることは覚悟でモリアン階段の踊り場にあるお店に入りました。昼時をだいぶ過ぎていたので混んではいましたが空席もあり、待つこともなく入ることができました。テラスではなく館内の席に座りました。上を見上げると素晴らしい天井画が見えました。シャルル・ルイ・ミュラーの作品のようです。サンドイッチ、ケーキ、サラダ、ミネラルウオーターをいただきました。

「ルーブルの中で食事ができると、ちょっと豪華な気分になるね。」
「そうね、ここも昔は宮殿だものね。確かにゴージャスだわ。」

「この後は『少年ルイ15世の胸像』『少年アラエクサンドル・ブロンニャールの胸像』『ルイ18世の間』『エフィアの間』『カモンドの間』『ナポレオンの玉座』『ルイ15世の王冠』を見ようね。

「ええ、それが終わればルーブルはもう大満足ね。あとはオルセー美術館でアングルの『泉』とミレーの 『落穂拾い』『晩鐘』を見られたら私は大満足よ。」

「まあ順調かな?」

「今のところ、そうね、到着した日にたくさん見ておくことができたのが良かったわね。」

サブローが『少年ルイ15世の胸像』『少年アラエクサンドル・ブロンニャール(Alexandre Brongniart)の胸像』の場所を調べました。ところがどちらも見つけることができませんでした。チエコは日本で見た本には確かに載っていたと力説していましたから、たぶん収蔵はされているはずなのです。サブローは自分の探し方に問題があるのだと思いました。チエコはとても残念がっていました。

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「『ルイ15世の王冠』はアポロンの間にあるようだよ。」

「本当?うれしいわ。なんだか見られないものが多いから。」

「まあ、なんと言っても情報の基にしている本が古いからね、思うようじゃなくても仕方がないよ。ルーブルの展示も多分、当時と今とでは随分変わっているんじゃないかな?」

「そうね。さっそく、そのアポロンの間に行ってみましょうよ!」

二人はお店を出ると王冠を見るために移動しました。
 

 『ルイ15世の王冠』

デュノン翼 2階 アポロンのギャラリー 展示室66

この展示室はとても豪華で眩しいほどです。チエコとサブローは圧倒されてしまいました。

ルイ15世の王冠は1722年に作られました。宝石職人、クロード・ロンデによってデザインされました。そして、ルーブルのギャラリー工房で働く、オーギュスタン・デュフロの指揮の下で制作されました。1729年に本来の宝石と取替えた後、サン・ドニに預託しました。1780年に宝石職人、M.ミラールが修復を行いました。1793年、国民公会の時に着用。メダル室に保管され、後に家具調度管理官に預託され、1852年にはトリアノン宮からルーブルに移されました。

王冠は部分的に金メッキを施された銀で作られています。オリジナルの宝石にそっくりの摸造品がはめられています。刺繍を施した布の部分があります。高さ24センチメートル、直径22センチメートルです。

戴冠式の際には、ルイ15世のために2つの王冠が制作されました。1つは釉(うわぐすり)をかけた金で、もう1つの王冠は、金箔を貼った銀で作られました。こちらがルーブルに保管されています。

王冠には白百合の紋が付いているのが特徴です。透かしのアーチ型の骨組みをのせた、金属の型にかこまれた縁なし帽からできています。全体に真珠と宝石をちりばめた作品です、中には白百合の紋章の形をしたダイヤモンドもあります。この王冠には大きなダイヤモンドが161個、小さなダイヤモンドが121個、ルビー16個、サファイア16個、エメラルド16個、その他の色石16個、真珠が237個使われていました。
 その後1723年、デュフロはロンデの指導で、まったく同じ型で同じ大きさの王冠を、 ポルトガルのジョゼフ5世のために制作しました。1725年には、ロンデの工房では、王妃のために、少し小さいサイズでルイ15世の王冠に近い構造の王冠を制作して納入しました。 

「ため息が出そうね、宝石はイミテーションなのでしょうがそれでも美しいわね!」 

「そうだね、もしも今、当時と同じ、本物の宝石を使ったまったく同じ物を作るとしたら莫大な予算が必要だよね。」 
 
(つづく)

良い旅を!

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