欧州ミュージアム巡りの旅 12 (旅行連載小説短編)

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※ 写真はイメージです。

ロンドンで晩御飯

「あれっ?今朝、宿から来た方と反対に向かってない?」

「鋭いね、その通りだよ。晩御飯はこっちでいいんだよ。」

「お店決めていたの?」

「うん。まかせておいて!」

「頼もしいわね。」

「熱々のあれだよ。」

「熱々のあれ?何だろう?」

「着いてのお楽しみ!」

6分ほど歩くと日本語で書かれた看板のお店に着きました。3人ほどのお客さんが行列を作って待っています。

「ここだよ。」

「もしかしてラーメンのお店?」

「そうだよ。」

「私てっきりフィッシュアンドチップスかと思ったわ。」

「そっちの方が良かった?」

「ううん。私ラーメンの方が嬉しいわ。なんだか体冷えちゃったから・・・。ほら博物館の中はちょっとひんやりするじゃない。」

「そうだね。街全体も石造りだからちょっと寒いときもあるよね。」

「こんな時はラーメンいいかもしれないわ。」

「とんこつラーメンが美味しいらしいよ。」

「私もそれがいい。」

食べ終わったお客さんがぞろぞろ出てきたので二人も待っていた三人について中に入りました。店内はカフェ風でおしゃれでした。豚骨スープの香りがします。

注文は日本語で訊いてくれました。チャーシューメンを2つお願いしました。麺の硬さは普通にしてもらいました。値段を見てチエコが驚きました。周りの人に聞こえないように小声でささやきます。

「お値段は日本の3倍もするのね。」

「そうだね、ここロンドンだから。」

「そうねロンドンなのよね。」

すぐにラーメンが目の前に出てきました。二人で顔を見合わせて微笑みあいました。

「ロンドンで熱々のラーメンを食べられるのは嬉しいね。」

「そうね。いただきます。」

「いただきます。」

スープを口にすると、これがおいしい。濃厚なとんこつの味がしました。麺もコシがあり美味です。

「日本で食べる味と同じだね。」

「そうね、博多のラーメンね。」

二人は夢中で食べました。スルスルと素晴らしいスピードでラーメンを食べる二人を見て、隣で麺が伸びきるほどゆっくり食べていたイギリス人が目を丸くして見ていました。

チエコはスープを半分ほど残しました。サブローは全部飲み干しました。

「本当は残した方が体にはいいんだけどね・・・。おいしかったから・・・。」

ちょっと言い訳をしていました。

「たまにはいいんじゃない?」

外を見ると行列ができていました。長居できる雰囲気ではなかったのでお会計をして二人で外に出ました。

満腹になった二人は宿に帰ることにしました。

 

宿の入り口まで来た時にチエコが言いました。

「私なんだか甘いものを食べたいわ。それにのども乾いてしまったわ。」

「そうだね、僕もお菓子を食べてゆっくり過ごしたいなあ。」

「どこかお店があるかしら。」

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「そうだねえ、旅行の前にインターネット上の地図で見ておいたんだけど、このすぐ近くにスーパーマーケットがあるようだよ。行ってみる?」

「ええ、行ってみましょう。」

まだ6時くらいですからロンドンの夜はまだまだです。真っ暗ではありますが、人通りは多いです。二人はそちらの方に歩いてみました。数分でショッピングセンターに着きました。お目当てのスーパーは奥の方にあるようです。幸いお店はまだ開いていました。

「少し遅くまで営業しているお店で良かったね。」

「ええ、ここなら何でも買えそうね。」

少し大きめのカートを押して二人で歩きます。珍しい品物があって見ているだけでも楽しいのです。値段設定は良心的で観光地価格ではない地元価格という感じでした。

結局、チエコはチョコレートとクッキーをサブローはポテトチップスとキャラメル味のスナック菓子を買いました。飲み物として500㏄位のペットボトル入りのミネラルウオーターを5本、15個入りの紅茶のティーバッグも買いました。

「明日も来ようかしら。」

「いいよ。来ようね。」

二人は宿に向かって歩きます。少し違う道を歩いて帰ろうとしたら、途中で24時間営業のコンビビエンスストアを見つけました。便利そうですが安全のために夜は出かけないようにしようと話し合いました。

宿に戻ると部屋はきれいに掃除されていました。

交代でバスタブにお湯を張ってお風呂に入った後、お菓子を食べながら買ってきた紅茶を飲みました。

「日本で飲むのと違っておいしいわね。」

「水が違うのかなあ。」

「そうかもしれないわ。」

「そうだ、洗濯物が溜まっちゃったなあ。」

「そうね、明日は洗濯物を宿にお願いしようかしら。」

「ランドリーサービスのことだよね。確かその日に出来上がるようにするには時間の決まりがあったように思うよ。」

「そうね、確か朝9時までに出せば夜7時までに出来上がるというのじゃなかったかしら?朝早めに出しましょうか。」

「うん、それがいいね。」

しばらくたわいない話をしました。話がはずむのがチエコは嬉しかったのです。

「そうだ、明日はどうしようか?ロンドンではもう一日過ごせるんだよね。」

「もう一度博物館かな?」

「いや、もう僕は見たいものを全部見たから、もう満足だよ。それより明日は君の行きたいところに行こうよ。」

「私の行きたいところ?本当にそれでいいの?」

「うんいいよ、どこでもお供いたしますよ。」

「じゃあひとついいかな?」

「どうぞ。」

「私、デパートに行きたいの。いいかな?」

「いいよ。ロンドンで一番有名なデパートに行こう!」

「ありがとう。うれしいわ。」

「お昼はフィッシュアンドチップスかな?」

「そうね、それ名物だから食べておかないと。」

そこまで話すと二人はすぐに休みました。昼間随分歩いて疲れたのかサブローはすぐに眠ってしまいました。チエコは隣のベッドで眠るサブローを横になって眺めていました。

(サブローは昔、二人が出会った頃のように優しいし、頼りになるし、目が生き生きしているわ。本当に旅行に来て良かったわ。明日も楽しみ・・・。)

(そうだ、歯をみがかなくちゃ・・・。)

そうは思ったものの力尽きてチエコもそのまま眠ってしまいました。

(つづく)

良い旅を!

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