欧州ミュージアム巡りの旅 16 (旅行連載小説短編)

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パリの宿にて

二人はチェックインをしました。部屋に入りました。金額からは考えられないほど素敵な部屋でした。

「良いお部屋ね、うれしいわ。」

「そうだね、値段と立地からするとすばらしいね。」

この宿はパリ中心部のシャトレ地区にあります。地下鉄シャトレ・レ・アル駅から徒歩5分。地図で確認してみると確かにルーブル美術館からとても近い所にあります。

とてもスタイリッシュな部屋の雰囲気を見てチエコが言いました。

「こういう造りはブティックホテルっていうのかしら?」

「そうだ、エレガントでモダンなデザインが売りっていう感じかな?若い人に好まれるスタイルかもしれないね。」

「そうね。そんな感じね。」

「私も嫌じゃないよ。芸術の都パリって感じでいいじゃないか?」

「確かに、素敵だと思うわ。」

どうやら各種設備も整っていて。客室数は38部屋あるようです。エアコン完備でランドリーサービスもあります。4つ星クラスのサービスを提供していると自負しているようです。

時計を見ると午後2時30分になっていました。

「この時間ならルーブルに行くこともできるかしら?」

「うん、それもいいね。でも、大英博物館と違って観覧料がかかるよ。一人15ユーロなんだよね、これはその時の為替レートで変わるんだけどおおよそ2,000円位かな?今日はルーブル美術館の閉館が午後6時の日だから3時間位しか見られないよ。ちょっともったいないかな?どうする?下見のつもりで行くのもいいかもしれないけど。」

「そうね、でも、私ルーブル行ってみたいわ。」

「わかった。じゃあルーブル行こうか?」

「ありがとう。うれしいわ。」

「じゃあ支度しようか?」

「ええ。」

支度をしながらチエコが貴重品の扱いについてサブローに訊いてみます。

「スリが多いっていうからパスポートや現金をスーツケースに入れて部屋に置いておいたらいいのかしら?カギもかかるし。」

「それはダメだよ。この宿がという訳ではないんだけどね。外国の宿はどこでも部屋に宿のスタッフが勝手に出入りすることがあると考えた方がいいよ。だから部屋には物を散らかさないでスーツケースにきちんと納めてカギをしっかりかける方がいいよね。部屋に置いておくものは無くしてもいい覚悟のものしか置いてはだめだよ。混入も怖いから常にチェックが必要だね。」

「そうなの?怖いわね。」

「いつもどおり貴重品入れは肌身に着けて持ち、財布やハンドバッグは盗られにくく持つことが大切だね。」

「気を付けるわね。」

「ちょっとだけ待ってね、糸出せる?」

「糸?」

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サブローはチエコが持参していた小さなソーイングセットから黒い糸を5センチメートルずつ2本分けてもらいました。それをそれぞれのスーツケースの上面の蓋と蓋の境目にサブローが持参していた小さなスティック糊(のり)で貼り付けました。
「それは何の意味があるの?」
チエコは不審に思って訊きました。
「うん、こうしておくと外出中にスーツケースを誰かが開けるとそのことが判るんだよ。」
「まあ、そうなの?サスペンス映画の話みたい。そんなに物騒なの?」
「まあね。外国はどこもそうだよ。だから用心のためにね・・・。」
「そうだったの。」
「よし、それじゃあ行きますか?」
「ええ。」
戸締りをよく確認すると二人は外出しました。

スタッフが流暢な日本語でにこやかに二人に訊きました。
「どちらへお出かけですか?」
「ええ、ちょっと。」
サブローはあいまいに答えました。
外へ出てからチエコは言いました。
「どうしてあんな答え方をしたの?」
「行動は正確に把握されないほうがいいんだよ。遠くへ行くと判ると部屋を物色されることもあるので本当のことは言わなくてもいいんだよ。それに今の人が本当にここのスタッフかどうかもわからない場合だってあるんだよ。」

ルーブル美術館へ

チエコはサブローと並んでルーブル美術館に向けて歩いて行きます。

手に大事そうに紙片を持っています。

「それは何かがいてあるの?」

とサブローが訊きました。

「ああ。これ?これはね、私が見たいものが書いてあるの。ご覧になる?」

「いいのかな?」

「うん、いいわよ。」

サブローはチエコから紙片を受け取りました。それを見てみると次のようにたくさんの作品名が書かれていました。

チエコが見たいもの

絵画

『モナリザ』 レオナルドダビンンチ

『泉』 アングル

『フェリペ四世の娘マリーマルガリータ王女の肖像』 ディエゴ・ベラスケス

『民衆を導く自由の女神』 ウジェーヌ・ドラクロワ

『落穂拾い』ジャン・フランソワ・ミレー

『晩鐘』ジャン・フランソワ・ミレー

彫刻

ギリシア

『ミロのビーナス』 ギリシア メロス島で発見

『サモトラケのニケ』 ギリシア サモトラケ島で発見

『パンアテナイア祭りの娘の行列』 ギリシア アテネ パルテノン

エジプト

『スフィンクス』

『ファラオ像』

『書記座像』

ヨーロッパ

『少年ルイ15世の胸像』 ジャックサラザン

『少年アラエクサンドル・ブロンニャールの胸像』 ジャン・バチストウードン

フランス王宮の間

『ルイ18世の間』

『エフィアの間』

『カモンドの間』

『ナポレオンの玉座』

その他

『ルイ15世の王冠』 デュフロとロンデ兄弟

 

「なるほど、これは確かに有名なものが含まれているね。僕も見たいなあ。」

「でしょ?」

チエコが笑いました。ルーブル美術館が見えてきました。

(つづく)

良い旅を!

参考文献:講談社 世界の博物館10 ルーブル博物館

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