欧州ミュージアム巡りの旅 15 (旅行連載小説短編)

スポンサーリンク


※ 写真はイメージです。(実際は複線です。)

ユーロスターに乗る

二人を乗せた車はすぐにセントパンクラス駅に着きました。ダニエルさんがスーツケースを車から降ろしてくれました。

「ここが駅です。入り口はあそこになります。ここでお別れです。ご利用ありがとうございました。」

「こちらこそありがとうございました。」

「それではお気をつけて良い旅を!」

「ありがとうございます。ダニエルさんもお元気で!」

「二人はダニエルさんに笑顔で手を振ると駅の方へ歩き始めました。」

セントパンクラス駅は大きな駅です。駅舎には大きな時計塔が付いています。ジョージ・ギルバート。スコット卿の設計による、ヴィクトリア朝・ネオゴシック建築です。とても荘厳で立派な建物でした。

セントパンクラス駅の近くにはキングスクロス駅と地下鉄キングスクロスセントパンクラス駅があります。この三つの駅の間は歩いて移動することができます。

ユーロスターのチケットは日本出発前に旅行社の担当者さんから印刷したものを渡されていましたから購入する必要はありません。まだ時間があるのでほんの少しだけ駅の散策をしてみました。駅には雑貨屋さんや食事のできるお店があり、便利そうでした。5番線から10番線がユーロスターのホームのようです。

出発の40分ほど前にインターナショナルと書いてある所へ行きチェックインしました。出発30分前には改札が締め切られてしまうらしいので間に合って良かったです。中に入ると手荷物検査がありました。ベルトコンベアーにスーツケースを載せます。サブローはチエコのスーツケースを手に取ると先にベルトコンベアーに載せました。後から自分のスーツケースも載せました。その後イギリス出国審査とフランス入国審査も受けました。

待合室に行くと満席でした。仕方ないので壁際の迷惑にならないところでスーツケースに座って待つことにしました。平らに置いて座ると横の広い面をつぶして壊してしまいそうなので、立てた状態から横倒しにして一片の長い面を上にして置きました。二人でそれぞれ座りました。

「こういう時はしっかりしたスーツケースが助かるね。」

「そうね。スーツケースにはこんな使い方もあるのね。」

発車20分前くらいに乗車ホームに上るためのエスカレーターが動き始めました。一斉に乗客が向かいます。チエコとサブローも乗車するユーロスターの停まっているホームに行きました。

二人が乗るのは1等の車両でしたがその1等の中でも2種類あり、二人の席はスタンダードプレミアで飛行機で言うとビジネスクラスくらいの席のようでした。二人は席を確認しました。

スポンサーリンク

席の所までスーツケースを持って行ってみましたが置く場所が無く、上の棚に乗せるのも重いので、仕方なく車両の入り口付近にあるスーツケース置き場に置きました。

「出発するまでは置き引きの可能性があるから僕がここにいて荷物を見ているね。君は席に座っていてね。」

扉が閉まり列車は動き始めました。サブローも席に着きました。

すべるように列車が走り始めます。ホームを抜けると外に出ました。パっと明るくなりました。ロンドンの街を眺めながらユーロスターは進んで行きます。

英語とフランス語でアナウンスがありました。

すぐに軽い食事とデザートが出されました。チエコとサブローには程よい量でした。

「おいしい料理を楽しみながら列車の旅ができるなんて贅沢だわ。」

「そうだね。こういうのもいいね。」

間もなく長いトンネルに入ります。乗客が英語やフランス語や日本語で話す声が入り混じっています。

やがてまた地上に出ます。郊外の風景が続きます。イギリス特有の草原や森が車窓を流れて行きます。

エブスフリートインターナショナル駅に停まりました。

その後何度かトンネルに入ったり出たりします。いよいよ英仏海峡トンネルに入ると20分位トンネル内の景色が続きます。

「トンネル長いわね。」

「そうだね、長いね。」

それでもそこを抜ければもうフランスです。カレーのあたりでしょうか?

フランスに入ってからパリまではやはり長いです。

パリ郊外の風景が続きます。やがてフランス語と英語のアナウンスがあるころにはすっかりパリの都心風景になっています。

他のユーロスターが止まっているのを見ながらパリ北駅のホームに入って行きます。静かに停車しました。パリ到着です。

パリ北駅に降り立ちました。特に入国カードというようなものはありませんでした。

改札を出ると、宿まで送ってくれるピ-ターさんというドライバーさんが迎えに来てくれていました。日本語を流暢に話す若者でした。スーツケースをガラガラと引っ張りながら車まで移動しました。ピーターさんが車に二人のスーツケースを載せてくれました。

宿はルーブル美術館にほど近い所にありました。ピーターさんは二人のスーツケースを車から降ろしてくれました。そして二人に言いました。

「4泊していただいてその翌日にこの宿の空港送迎バスでシャルルドゴール空港まで移動していただき、日本へお帰りいただきます。どうぞパリをお楽しみください。」ピーターさんはにっこり微笑むと去って行きました。

「さわやかな方ね。」

「若いっていいものだね。」

「そうね。若いときはそのことがわからないのよね。」

「そうだね。さて私たちも行きますか?」

二人で宿に入って行きます。ここは例によって安い宿なのですが二人には十分快適に暮らせそうです。

(つづく)

良い旅を!

スポンサーリンク

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です