機内にて
二人が座っている席は3人が並んで座る席でした。結局、窓側の席には誰も座らなかったのでした。サブローとチエコは事実上3つの席が使える状態だったのです。これはちょっとラッキーです。窓側のその席に二人の手荷物や上着を置きました。おかげで足元が広くなりました。
サブローの提案で、出発時にサブローとチエコの二人は腕時計をロンドンの時間に合わせていました。グリニッジ標準時間です。そのリズムに合わせてロンドンが昼なら機内でも起きているし、ロンドンが深夜なら機内でも眠るというようにしました。ロンドン東京間は時差が9時間で東京の方が進んでいると考えると成田の出発が午後1時30分頃でしたからロンドンのその時の時間は午前4時半ということになります。飛行機に乗っている間にその時間に慣れておこうという考え方です。初日は長い一日になるわけです。これで時差ボケを防ぐことができれば良いのですが・・・。
パリ到着までに食事が何度か供されました。出された食事は必ず食べることにしました。
長い時間飛行機に乗っているとさすがに体が参ってきます。サブローはチエコに言いました。
「水分をなるべく多めに摂って頻度良くトイレに行く方がいいよ。いわゆるエコノミー症候群の予防にもなるからね。」
「解ったわ。そうするわね。それにしても私、長く座りすぎて脚や腰が痛くなってきちゃったわ。」
「僕もだよ。」
「椅子の上で正座してもいいのかしら?」
「西洋の人はしないだろうけれど、僕らは人に迷惑でない範囲ならいいんじゃないかなあ?隣りの席に座っている人もいないし・・・。」
二人は正座をしてみました。
「姿勢を変えると楽ね。」
「そうだね。」
それから二人はいろいろと姿勢を変えてみました。
昔、観光バスの中でバスガイドさんがバスの中でもできる体操を教えてくれたことがありました。それを思い出して二人で首肩から腕や上半身、脚、足へと体操をしてみました。少しリフレッシュしました。
やがて、機内の照明が消されて夜モードになりました。
飛行機のクルーが眠りやすくしてくれているのでしょう。チエコもサブローも眼を閉じていたらいつの間にか眠ってしまいました。
サブローの旅の鉄則の一つが、「安全に眠ることができるときにはしっかり眠る!」なのです。
着陸
着陸が近づきました。シートベルトをしっかり着けました。シートを後ろに少し倒していたので正しい位置に戻しました。借りていたイヤホンを 客室乗務員さんが回収していましたのでお返ししました。カップの飲み物は飲み終えて空にしておきました。客室乗務員さんがカップ等の回収しているときにお渡ししました。使用していた小さなテーブルを元に戻します。目の前の椅子に格納しました。窓の日よけを上に引き上げて開けました。
機体が大きく傾いたときに地上の景色が良く見えました。無事に着陸することができました。12時間40分ほどでシャルル・ド・ゴール国際空港に到着しました。パリの時間で午後7時位でした。ロンドンの時間では午後6時位でしょうか?
忘れ物をしないようにサブローがチエコに注意します。特に目の前にある雑誌などを入れるポケットに眼鏡ケースやボールペン、ポケットティッシュやウエットティッシュ、腕時計、ネックレス、スマートフォン、パスポート、などを置き忘れないように確認しました。座席の上と足元も確認しました。
飛行機を降ります
着陸してすぐに皆立ち上がり降りる準備をしていました。チエコが立ち上がろうとしたのをサブローが止めました。
「エコノミー席の場合、すぐには降りることができないよ。まずファーストクラスのお客さんが降りて、次にビジネスクラスのお客さんが降りて、そうしてようやくエコノミー席の前のほうから降り始めるんだよね。だから機体が止まっても、私たちみたいに後ろの席の場合、あまり早く立ち上がって通路に出ても前へはなかなか進めないんだよね。だから座ってゆっくり待つのがいいんだよ。一般の旅行目的ならあわてて降りる必要はないよね。」
飛行機の出口では客室乗務員さんに笑顔で 「ありがとう!」 と挨拶をして飛行機を降りました。
パリでロンドンへ飛ぶ飛行機への乗り換えです。トランジットと言います。なのでまだ到着ではありませんが、とりあえずヨーロッパまでやって来ました!
トランジット専用の待合室に通され、保安検査の後、空港の搭乗口エリアでロンドン行きの飛行機を待つことになりました。8時50分頃の出発予定です。二人が機内預けした2個のスーツケースは航空会社で次の飛行機に載せ換えてくれるようです。純粋に待っている時間は1時間位でした。それほどお腹は空いていませんでしたが、売店で暖かいコーヒーとパンを買って二人で話をしながら待ちました。
イギリスへ
再び飛行機に乗ります一時間と少しでイギリスのヒースロー空港に到着しました。検疫、入国審査、税関などを通り到着ロビーに出たときにはもう10時を回っていました。
「こんなに遅い時間なのにお迎えに来てくれるのかしら?」
チエコが心配そうに言いました。
到着ロビーにはお願いしていた旅行会社のマークの付いた大きなカードを持った男性が立っていました。
「ようこそイギリスへ!鈴木さんですね?」
流暢(りゅうちょう)な日本語で出迎えてくれました。送迎サービスをお願いしておいて良かったと思いました。
良い旅を!