欧州ミュージアム巡りの旅 7 (旅行連載小説短編)

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離陸

搭乗する飛行機はパリ経由のロンドン行きでした。ロンドンからパリへ旅行するのに初めに飛行機の乗り換えをするのがパリというのはちょっと釈然としない感じもしますが、たまたまトランジットの場所がパリだっただけで、航空会社によってはヘルシンキだったりローマ、フランクフルト、ミュンヘン、チューリッヒ、アムステルダム、コペンハーゲン、ソウルなど様々な場所が経由地になっているようです。

搭乗口に行くとすでに搭乗は始まっていました。搭乗口に連なる列の一番後ろに並びました。搭乗券の確認が済むと機内に入って行きます。

機内は満席に近い状況でした。そのため席はすぐに判りました。念のため手元のチケットと座席番号を比べて確認しました。間違いなさそうです。頭上の荷物入れはどこも満杯で入れることができませんでした。早い者勝ちなのですね。客室乗務員さんに相談すると。足元か前の席の下に置いて下さいとのことでした。二人とも荷物は小さい方だったので前の席の下に楽々置くことができました。二人で椅子に座りました。狭いスペースではありますが座ることができてほっとしました。次に降りるときはもうヨーロッパなのです。

長距離便なので毛布と枕は席にすでに置いてありました。シートベルトを着用します。

しばらくすると「ポーン」という音とともに「FASTEN SEATBELT」の表示が光りました。

「どういう意味なの?」

チエコがサブローに訊きます。

「ああ。あれはね、シートベルトを着けていてくださいっていうサインだよ。ベルトサインて言ってベルトをしてください!という意味だね。自動車と同じだよ。動いている時は基本的に着けている方がいいよね。」

「高くて広い所を飛んでいるのにどうしてシートベルトを着けていなくてはいけないの?」

「うん。それはね、機体の揺れやエアポケットがあるからなんだよね。大きな機体だと小型機よりは揺れないけれど、それでも乱気流の中だと揺れるのでシートベルトは着けていないと危ないよね。それにエアポケットといって100メートルとか200メートルとかいう単位で急に機体が揚力を失って一瞬だけ高度が下がることがあるんだよね。その時にもしシートベルトを着けていないと体が宙に浮いてしまって、機体の落下が止まった時にはどすんと床に叩きつけられてしまうんだよね。そんなわけでシートベルトは必要なんだと思うよ。ベルトサインが消えていてもシートベルトは着けていようね。」

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「うん分ったわ。ところで読み方は何て読むの?」

「ファッスン シートベルトでいいと思うよ。」

「そうだ、シートベルトは着けていた方がいいんだけどね、エコノミー症候群が怖いので辛い場合はもちろん外した方がいいし、時々は立ち上がったり歩いたりするほうが体にはいいらしいよ。矛盾するようで難しいよね。でも、まあ臨機応変にね。」

「うん。分った。ありがとうね。」

 

チエコは目の前の椅子の背もたれに雑誌などを入れるポケットがあり「非常マニュアルの紙」があるのを見つけました。酸素マスクの装着方法や救命胴衣の置いてある場所(椅子の下)とその装着の仕方、脱出する場合の避難経路やスロープを使った機体からの脱出方法などがイラストで解りやすく書いてありました。

「このマニュアルに書いてあるようなことが起こったら困るわね。」

「そうだね。非常事態は起こらない方がいいよね。でも知っておくことは必要だと思うよ。目だけは通しておこうね。」

「うん。そうするね。」

チエコの目の前の椅子のポケットには航空会社発行の月替わり冊子が入っていました。軽い読み物から通信販売、機内で聴くことができる音楽や視ることのできる映像の番組表が書かれていました。海外旅行関係の新しい情報も書かれていました。二人で疲れない程度に軽く目を通しました。

機体は動き始めました。

「今はいいんだけどトイレはあるの?」

「この席からだと前の方にも後ろの方にもあるよ。だから大丈夫だよ。」

飛行機は滑走路を走り始めます。ふわっと飛び立ちました。チエコは少しどきどきしました。

離陸して安定した飛行状態になると、ベルトサインが消えました。

客室乗務員さんがワゴンを押しながら飲み物を配ってくれました。チエコはオレンジジュースを、サブローはグレープフルーツジュースをお願いしました。二人で小さく乾杯しました。

機内は若干乾燥します。また、エコノミー症候群対策としても飲み物を飲むことは良いようです。

席にはステレオのイヤホンが置いてありました。ジャックに差し込んでみると良い音で音楽を聴くことができました。

しばらくすると食べ物のいい香りがして食事が出されました。

「フィッシュ オア ビーフ?」

と客室乗務員さんが訊いてくれました。

二人とも

「フィッシュ プリーズ」

と言って魚料理を選びました。

「おいしいね!」

「良かったね!」

さて、お食事の後は飲み物のサービスがありました。

「ティー オア コーフィー?」

と訊かれました。二人ともコーヒーを選びました。

(つづく)

良い旅を!

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