千葉・親子旅 2(旅行連載小説短編)

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バスに乗る

お腹がいっぱいになったところでツアーバスとの待ち合わせの場所に向かいます。今回は新宿の郵便局前でした。時間より数分遅れてバスが到着しました。バスにはもう半分位お客さんが乗っていました。

東京では普段バスに乗っても挨拶はしません。また、日帰り旅では深い人間関係を作りたくないので挨拶をしないという人もいます。さらに、早朝で席で眠っている人が多いときにはあえて挨拶をせず会釈程度にすることもあります。アオイは日帰りとはいってもしっかりと旅行の気分だったのでバスに乗るとき運転手さんとすでに乗っている乗客に元気よく「おはようございます!」と挨拶をしました。数人が「おはようございます。」と挨拶を返してくれました。コウドウは恥ずかしいので軽く会釈をしただけでした。

母と高校生の息子が並んで座るのは息子的には微妙だったようですが、母は嬉しそうです。なかなか息子と旅はできないので新鮮な感覚でした。

バスが走り出すと女性の添乗員さんがさわやかにアナウンスを始めました。」

「おはようございます。本日、私、栗原が皆様と一日ご一緒させていただきます。改めまして、添乗員の栗原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は当ツアーをご利用下さいましてまことにありがとうございます。東京湾アクアラインを通りまして、海ほたるパーキングエリアに30分ほど滞在いたします。千葉県に入りましたらお寿司の食べ放題をお楽しみいただきます。お買い物を40分・食べ放題70分を予定しております。お食事が終わりましたら自然豊かな牧場に移動いたしまして2時間ほど滞在してお楽しみいただきます。動物たちと触れ合っていただくことができます。そして旅のしめくくりとして「はちみつ」採取の体験と試食、お買い物をしていただきます。新宿には19時、大宮には20時到着の予定です。楽しい思い出に残る旅となりますようにどちらさまもご協力をお願いいたします。特に集合時間はお守りいただけますようにお願い申し上げます。それでは何かございましたらお声がけください。栗原でした。」

アナウンスが終わると母のアオイは言いました。

「添乗員さんは栗原さんなのね。」

「興味ねえし。」

そう言っていますがコウドウは若くてきれいなバスガイドさんに目が釘付けになっていました。若い男の子ですからむしろそのほうが健康的かもしれません。

バスは首都高速道路に乗りました。首都高速道路は「首都低速道路」と揶揄(やゆ)されるほど渋滞がひどい時があります。平日だと時間によっては乗らないほうがいいのですが、日曜日の朝のためか快適に車が流れています。都内を南下して行きます。首都高速4号線から都心環状線、1号羽田線、11号台場線、湾岸線とバスは進んで行きます。

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東京に住んでいても東京の景色は意外に見ていないものです。こうしてバスの車窓から眺めるとビルがひしめき、高架の電車や工場の煙突、湾岸の巨大なクレーンなども見えて興味深いものでした。

アオイはバッグからお茶のペットボトルを取り出すとコウドウに渡しました。

「はい!飲んでね!」

コウドウは無言で受け取りました。本当はせっかく二人でいるのだから何か話せたらいいのですが、コウドウは思春期で難しい年ごろなので中々会話になりません。アオイは(これも成長の過程だから仕方がない。)と思っていますが少し寂しくもあります。

周囲の建物は高さが相対に低くなってきているので、とても眺めが良くなってきました。遠くまで見渡すことができます。ゆるやかに道路が左のほうへ曲がっていきます。前方に横浜ベイブリッジが見えてきました。バスはいよいよアクアラインに向けて3車線の道路がそのまま東京湾に向かっていきます。二つの巨大な橋の柱が見えてきました。

「ええ、皆さま!これから皆さまと渡ります横浜ベイブリッジは長さ860メートルのつり橋です。本牧埠頭(ほんもくふとう)と大黒埠頭を結んでおります。高度経済成長により悪化した横浜市街地の交通渋滞を解消するために作られました。1989年、平成元年の9月27日に完成いたしました。横浜ベイブリッジの上を走る道路は首都高速湾岸線です。下を走る道路は国道357号線となっております。上を走る湾岸線の自動車につきましては、制限速度を建設当初、時速70キロメートルとしていましたが、現在では制限速度を時速80キロメートルとしております。この橋は125㏄以下のオートバイは走ることができません。また、歩道もございませんので歩いて渡ることもできません。自動車でしか渡れません。なんと素晴らしいことに今日は皆さん車に乗っていらっしゃいますので渡ることができます!(笑)なお、建設当初は首都高速湾岸線のみでした。そのため、高速通行料金を払いたくない大型車両が多く、本牧から大黒への移動にベイブリッジを避けて市内の中心部にある一般道へ迂回するコンテナ車両などが多くなってしまいました。これでは困りますから地元の住民や港湾の関係者などが一般道を作って欲しいと要望しました。そこで2004年(平成16年)には下の道路を通れるようにして一般道を開通させました。現在では横浜港内の港湾関係車両の重要な移動経路となっております。最近の問題としましては、豪華客船の大きさがかなり大きくなってきたためにこの橋をくぐることができない船もでてきたことです。ちょうど子供さんの背が伸びて鴨居に頭がぶつかるようになってしまったようなものですね。」

「コウドウ、あんたのことじゃないの?(笑)」

「うるせえ。」

「さて、皆さま、間もなくベイブリッジを渡ります!」

(つづく)

良い旅を!

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