みちのく・弘前にて 11(旅行連載小説 短編)

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サキはバスに乗って家に向かいました。家に帰ると両親はお土産を喜んでくれました。

「意外サ地元のお土産はわたじサは買わねかきやのんだか新鮮の感じだきゃ。」(意外に地元のお土産は自分たちには買わないからなんだか新鮮な感じだね。)

「んだきゃ、だばおがはこい好きし。ありがどーごしきゃ。」(そうね、でもお母さんはこれ好きよ。ありがとうね。)

と言ってくれました。

親戚集まる

翌日のお昼頃には親戚が集まってきました。ツネヨシおじさんの家族3人とイチゴおばさんの家族4人とサキの家族3人で合計10人でした。いとこの津軽メロンちゃんはツネヨシおじさんの娘です。同じく三沢ツバサちゃんはイチゴおばさんの娘です。弟のマモルくんも一緒です。全員揃うのは久しぶりです。お墓参りをしたあとは、近くの料亭でサキたちの祖父を追悼する会を行います。会とは言ってもほぼ食事会です。

いとこの4人は年も近いので話が盛り上がります。最近の仕事や趣味、恋の話などで盛り上がります。サキは正直に現状を話しました。メロンちゃんは言いました。

「人生は天気ど同じだし。晴れた日もあいば雨の日もあらし。だれだりへずねどきが必ずあらもの・・・。だばその辛さば克服できたきやわんつか大きの人サのれらしきゃ。だかきや大丈夫!こしたらどきは笑顔が大事し!運命の女神さまサ微笑んだばきやうたまなぐサはこちきやかきや微笑まねどきゃ!」(人生は天気と同じだよ。晴れた日もあれば雨の日もあるよ。だれだって辛いときが必ずあるもの・・・。でもその辛さを克服できたら少し大きな人になれるよね。だから大丈夫!こんなときは笑顔が大事よ!運命の女神さまに微笑んでもらうためにはこちらから微笑まないとね!)

「ありがどーごし、んだすらきゃ。」(ありがとう、そうするね。)

サキはにこっと笑って見せました。

それからとりとめのない話をして散会しました。

夕食にて

両親とサキの三人だけの夕食のとき、父がサキに訊きました。

「何んぼすら?こっちで就職すらのだな?それども東京へけぇるのだな?」(どうする?こっちで就職するのか?それとも東京へ帰るのか?)

「う~ん。」(う~ん。)

サキは少し考えました。

「私、もう一回東京で頑張ってみら。」(私、もう一回東京で頑張ってみる。)

「んだか。わで決まなぐたのだばそれでいいし。」(そうか。自分で決めたのならそれでいいよ。)

「体サは気ばつけいてきゃ。」(体には気をつけてね。)

「ありがどーごし。かっちゃ。」(ありがとう。おかあさん。)

「じぇんこがねどきはすぐサ知きやせらんだぞ。」(お金が無いときはすぐに知らせるんだぞ。)

「ありがどーごし。とっちゃ。」(ありがとう。おとうさん。)

サキ・東京に戻る

翌日サキは東京へ帰りました。

東京のアパートに帰ってから、サキは自分の部屋の掃除をしました。キッチンもきれいにしました。トイレもバスもきれいになりました。不要なものは全部捨てることにしました。特に、派手な服や靴、アクセサリーは必要な分を残してほとんどを処分しました。ブランドバッグもほとんど売り払いました。とてもすっきりしました。

近くのスーパーに食料品を買いに出かけました。書籍売り場に求人情報誌があったので購入しました。さっそく自宅に帰ってデザイン関係の仕事を探します。意外にも求人自体はたくさんあるのです。いくつもの会社を選び応募してみました。

その後、倒産した会社から離職票が発行されたので行政で設置している職業安定所にも通いながらデザインに関する会社の面接を50社ほど受けました。しかし、なかなか採用してもらえません。現実の厳しさをいまさらながらにかみしめるサキです。

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五所川原先生から勧められた本はすでに2回ずつ読み終わりました。デザインの通信教育も見つけることができたのでパソコンを使って勉強を始めました。デザイン会社でよく使われているデザインソフトも購入しました。ソフトの操作にも大分慣れました。興味深い美術展があったのでいくつか見に行きました。また、美術に限らず美しいデザインのものを見るように心がけました。街の中に案外素敵なデザインが多いことが解りうれしくなってしまったこともあります。

新宿御苑でスケッチ

就職活動をしていると本当に気が滅入ります。そこで日曜日だけはお休みにすることにしました。そして高校時代を思い出して、趣味だったスケッチに行くことにしました。家の近くに新宿御苑があるので、晴れた日曜日にスケッチをするため出かけました。津軽の緑ほどではないけれど、この大都会によくこんなにと思うほど緑がありスケッチには最適です。散歩中のカップルがスケッチをのぞき込んできました。

「とてもいいスケッチですね!ちょっと見せていただいてもよろしいですか?」

「だまなぐじゃ。でずなしじゃかきや・・・。」(だめです。下手ですから・・・。)

サキは慌てて上体を前に倒しスケッチを胸に当てて隠しました。

「えっ? 外人さんですか?」

「いえっ。失礼しました。突然だったので訛りが出てしまいまして・・・。」

「ああ、びっくりさせてしまったのですね。ごめんなさい。僕たちもスケッチが好きなのでつい声をかけてしまいました。」

「ごめんなさいね、この人、絵を描いている人がいるとつい声をかけてしまう癖があるんです。でももし嫌でなかったら見せていただけますか?」

「はいっ。」

サキはスケッチを二人に見せました。

「うん、優しい暖かい線で描けるんですね。構図も正確だね。」

と彼が力強い声で言いました。

「そうね。樹も生き生きとしてる。自然を良く理解してるのね。」

と彼女が優しい声で言いました。

「ありがとうございます。」

「お邪魔してごめんね。」

「いえ。」

「スケッチを楽しくお続けくださいね。」

「はい。ありがとうございます。」

カップルの二人は楽しそうに話をしながら歩き去って行きました。

(いいなあ・・・。爽やかなカップルね、私もいつかは・・・。)

サキはそんな風に思いながら、もう少しスケッチを続けてから帰りました。

最後の就職活動

翌日は月曜日、朝のうちに履歴書を一枚書き上げました。

デザインの会社を探してもどうも就職できそうにありません。そこで仕方なく他のページも探してみることにしました。事務職の所を見ていると、

[ 江洲木レンズ工業 東京営業所 事務員さん募集!・・・デザインに興味のある方を募集します。採用は準社員です。 経験不問。学歴不問。(給料は安いです!) お電話お待ちしております! ]

(「給料は安いです!」って、正直だけど応募しづらいよね・・・。準社員だし・・・。でも・・・。)

サキは携帯電話を手に取って掛けてみます。少しだけ緊張します。

「はじめまして、求人情報誌を見てかけさせていただきました。津軽サキと申します。今お電話よろしいでしょうか?」

すると電話の向こうで女性の優しい声で「お電話ありがとうございます。大丈夫ですよ。どうぞお話しください。」と返答がありました。

「はいっ。ありがとうございます。御社では準社員を募集していらっしゃるようですが・・・。」

(了)

良い旅を!

※ 本作品はフィクションです。登場する人名・団体名は架空のものであります。実在の人物・団体とは一切関係ありませんのでご了承願います。また、津軽弁は各種サイトやサイトの自動翻訳を利用して書かせていただきました。もし間違っている場合はお教えいただけますと幸いです。

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