箱根・思い出のアート 8(旅行 連載小説 短編)

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箱根湯本の温泉卵

喫茶店を出るとリサとソウタは箱根湯本の駅前を散策しました。何軒かの「おみやげ」屋さんを見て歩きました。饅頭(まんじゅう)や煎餅(せんべい)を中心に様々な「おみやげ」が売られていました。二人は温泉卵を探していました。意外にもあっさりと見つけることができました。そこで売られていたのは殻が黒い色の温泉卵でした。この温泉卵は中身が半熟で美味だそうです。賞味期限が設定されているようなのでそこは注意が必要なようです。半熟なのでそこで食べるのはちょっと難しそうでした。二人はそれぞれ買って家に持ち帰って食べることにしました。

「温泉卵を買うことができてよかったね。」

とリサが言いました。

「うん。よかったよ。」

とソウタは答えました。

駅前でアート

「本当は他にも美術館がたくさんあるし、箱根の関所やケーブルカー、ロープウエイ、遊覧船、水族館、植物園、滝、ゴルフ場など箱根には遊べるところがいっぱいあるんだけど、今回はやめとこうね。」

「そうね、行けたらよかったんだけど・・・。」

「ごめん、気にしないで、でもね、一か所だけ予約しておいたところがあるから行ってみる?」

「うん、いいよ。どんなとこ?」

「うん、この近くにガラスを使った細工を体験できるところがあるんだよね。」

「へえ、いいわねえ。」

「予約してあるから行ってみようよ。」

「うん。」

「初心者歓迎で2歳からいいんだって。65歳以上もOKだってさ。」

「つまりほとんど誰でもOKってこと?」

「そういうこと。」

「それなら私にもできそうね (笑)」

「そうだね、僕にもできそうだね (笑)」

箱根湯本の駅前にあるので、すぐにその場所はわかりました。ビルの3階にありました。

イタリア製のヴェネチアンガラスを使ってのフュージングという技法が体験できるようです。特徴は色彩がカラフルなことで、様々な作品を作ることができるようです。
フュージング自体は、ガラスを高熱にして接着する技法なので、その部分はプロの職人さんにお願いしないとできません。けれどもガラス細工の雰囲気は味わえるしオリジナルの作品を作ることができます。ただし、その日の持ち帰りはできないので10日間前後で自宅へ送られてくるのを楽しみに待つことになります。体験料と送料がかかりますがリサが想像した料金よりはリーズナブルでした。

二人は箸置きを作ることになりました。

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まずガラスのベースを選びます。色はたくさんの種類があるので迷いましたが、結局ソウタはブルーを選びました。リサは白を選びました。
次はそのベースの上にヴェネチアンガラスのミルフォリやオリジナルの棒状ガラスなどを糊付けします。ミルフォリは棒状のガラスを輪切りにしたものです。その輪切りのすべての断面には花の模様が見えます。そのものとそれを使って作った作品をミルフォリというそうです。ソウタは白と黄色の花に緑のミルフォリを加えてさわやかに仕上げました。リサはピンクと緑で可愛らしく仕上げました
作品作りは1時間ほどで終了しました。

ソウタは外に出ると大きく伸びをしました。乾いた涼やかな風が通り過ぎます。二人は駅に向かって歩きはじめます。

リサがピンチ

「リサ、お手洗いは大丈夫かな?」

「そうね、ありがとう。」

「僕はここで待っているね。」

秋なので観光客は少ないのですが、それでもだんだん人が多くなってきました。

10分近くもリサが帰ってこないのでソウタは少し心配になってトイレのほうに歩いて行きました。するとその途中でリサが5人の若い男たちに囲まれて動けずに困っているようでした。ソウタは急いで向かうとその男たちに割って入りました。

「私の妻が何かしましたか?」

ソウタは毅然として言いました。

「いや、ちょっとお茶に誘っていただけです。」

若者の中のリーダー格の一人がそう答えました。

「そうでしたか、先を急ぐのでこれで失礼します。」

ソウタはリサの手を取ると男たちの中からリサを連れ出しました。そのまま駅のコインロッカーのある場所に向かいます。男たちが追ってくるかな?と思いましたが追っては来ませんでした。後ろから男たちの会話が小さくなりながら聞こえてきます。

「人妻に手を出しちゃあだめだよ。」

「だよなあ。」

「お前、人を見る目がないよなあ。」

「言うなよ、お前だってあの娘かわいいとかいってたじゃんよ。」

「女の子3~4人のグループでないと難しいんじゃないのかな・・・」

どうやら普通にナンパしたかっただけのようでした。ソウタはリサに訊きます。

「平気?」

「うん平気。」

「それならよかったけど・・・。」

「でも怖かった。大勢の男の人たちに囲まれると声も出せなかったわ。」

「そうか、トイレまで付いて行ってあげればよかったね。ごめん。」

「ううん。でも助けてくれてありがとう。」

「どういたしまして。」

「でも妻とかいうからちょっとびっくりしちゃった・・・。」

「あれはアドリブ、そう言えばスムーズに解決するかなと思って・・・(笑)」

リサも笑いました。

「ようやく笑顔が出たね、良かった。」

「うん。」

「リサ、そろそろ東京へ帰ろうか?」

「はい、そうしましょう。」

二人はコインロッカーから荷物を取り出すと東京へ向かう列車に乗りました。

(つづく)

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良い旅を!

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