箱根・思い出のアート 7(旅行 連載小説 短編)

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翌朝

朝、薄明るくなった頃、ソウタは鳥のさえずりで目を覚ましました。横を見るとリサがまだ眠っています。小さな寝息が聞こえています。ソウタはリサが可愛いなあと思いました。リサの肩がふとんから出てしまっていたのでふとんから肩が出ないようにふとんを直してあげました。ソウタは(もうひと眠りしようかな?)と思いました。目を閉じるとまた眠ってしまいました。

次にソウタが目を覚ますと今度はリサはもう起きていて横になったままソウタを見つめていました。

「おはよう!」

とリサが言いました。

「おはよう。」

「よく眠れた?」

「うん。リサは?」

「私もおかげさまでよく眠れたよ。」

「もっとリサと話がしたかったんだけど途中で眠っちゃったね。」

「私もよ。」

二人は着替えて宿を出る準備をしました。

 

「忘れ物はないかな?」

二人は部屋を確認しました。

洗面台の上やトイレ、浴室、セーフティーボックス、冷蔵庫、クローゼットなども念のため確認しました。

「大丈夫みたいよ。」

「そうだね。」

バッグとスケッチブックはソウタが二人分を持ちました。

フロントで部屋のカギを返してチェックアウトをしました。特に追加料金はかかりませんでした。

「朝ごはんは駅の近くで食べようか?」

「そうね。」

駅まで歩く間少し風が冷たく、箱根の秋を感じました。

箱根湯本の駅に着くともう一度バッグとスケッチブックをコインロッカーに預けました。

「身軽になったね!」

「荷物を預けられるのは便利ね!」

二人はそれから駅の近くで喫茶店を見つけました。お店に入ると暖かく安心しました。ピザトーストとコーヒーを頼みました。リサはトーストを目を閉じて味わっていました。最近東京で見た美術展の話などをしました。

二人の隣のテーブルに老夫婦がやってきて座りました。コーヒーを注文したようです。おばあさんがトイレに行こうとして立ち上がった時、ハンドバッグを落としてしまいました。ハンドバッグはフタの留め金が外れていました。そのため、ハンドバッグの中身は、ソウタたちのほうへ全部ぶちまけたかのように飛び出して床に落ちてしまいました。おばあさんはあわてて拾おうとしていましたが思うように体を動かすことができません。その時、ソウタとリサは素早く席を立ち、手早く拾い集めるとおばあさんのバッグに入れてあげました。

「平気ですか?」

とリサが声を掛けます。

「はい、どうもありがとうございます。」

「お怪我がなくてよかったですね。」

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とソウタも声をかけます。

おばあさんは二人を交互に眺めると言いました。

「お二人は深い絆で結ばれているね、でもね、今それが消えかかっているよ、お兄さん!このお嬢さんの手を絶対に離してはいけませんよ!きっと幸せになれるから!」

「え?」

ソウタとリサは突然の言葉に少し驚いてしまいました。

おばあさんの連れのおじいさんが言いました。

「いやあ、すまないねえ、妻は普段占い師をしてるんだよ。この旅では仕事のことは忘れて楽しもうって言ってたのにねえ・・・。」

「そうだったわ、ごめんなさい、あなた。」

「いいさ、お前らしいよ。」

「何と言ったらいいか・・・。がんばります!」

とソウタが言いました。

「ありがとうございます。」

とリサも言いました。

二人は席に戻り食事を再開しました。おばあさんの言葉を聞いたら、なんだか急にお互いを意識してしまい、あまり会話が弾まなくなってしまいました。ソウタもリサもこれからの二人の関係をどうしていったらいいのか思いがけず考えてしまいました。思えばとても大切なことなのに今まで話すことを避けていたような気もします。

 

食事が済むと、二人は老夫婦にあいさつをして喫茶店を出ました。

「あとは温泉卵かな?」

「そうね。おみやげ買わなくちゃ。」

(つづく)

良い旅を!

 

※ 宿での記述に関すること:このお話に登場する宿は実在しません。かなり脚色してあります。鍵のシステムや浴衣など、筆者のイメージで描いています。実際には和室ではなく洋室が多かったりもします。ただし、露天風呂付の客室というものは箱根湯本にも実際に複数あるようです。

一般論ですが、飲食物の持ち込みを遠慮したほうが良い宿もありますので気をつけましょう。

余談ですが筆者個人としては一般的に露天風呂が大好きです。どのくらい好きかというと他の温泉地の屋根がない露天風呂で、大雨の日に宿のご厚意で檜笠(ひのきがさ)をお借りして、それをかぶりながら入ったことがあるほどです。大粒の雨が激しく降る中、お湯に入っていると雨粒が笠に当たってこれがやかましい(笑)ちょっと落ち着かなくて・・・。やはり経験上、静けさを保っている露天風呂のほうが快適です。なのでやはり旅行は晴れがうれしいです!

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お話の中でソウタはお茶を入れていますが、実際に湯冷まし用の片口などを使う家もあるそうです。茶葉の種類によってもいれかたは異なりますので、正しい緑茶のいれ方は専門家などからご確認ください。

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