箱根・思い出のアート 3(旅行 連載小説 短編)

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チェックイン

箱根は秋の風情がただよっていました。紅葉も始まりかけています。しばらく歩くと予約しておいた宿に着きました。

「予約しておいた江洲木ソウタです」

「江洲木さまですね。はい承っております。お食事の付かない、ご宿泊のみのプランですね。」

「はい、そうです。」

二人の旅行目的は思い出を作ること。そのために今回、二人はかなり頑張って出費しました。一泊二日の旅行は学生の二人にとってはかなり大人びた、ちょっと背伸びをしたものです。今回の旅行で一番の出費は宿の費用でした。本当は夕食付にすると楽しいのだけれど、そうするととても費用が高くなってしまいます。そのため夕食なしのプランにしたのでした。

「ご利用ありがとうございます。ただ、チェックインのお時間は午後4時以降になっておりますのでまだお部屋にご案内することができないんです。申し訳ございません。」

「そうでしたか、困ったなあ。それじゃあ、またその時間以降に来ます。」

「もしよろしければ、こちらの書類へのご記入だけなさいますか?」

「はい、そうですね。」

ソウタは二人の住所氏名を宿泊カードに記入しました。

「あの、この辺りで荷物を預かってくれるような所はありますか?」

「はい、箱根湯本の駅にはコインロッカーがありますのでそちらをご利用いただくとよろしいかと思います。」

「わかりました。ありがとうございました。」

ソウタとリサは宿を出ました。

「ごめんね、宿のことをもっとちゃんと調べておけばよかったよね。チェックイン時間の前だとお部屋に入れないんだね。」

「そうね、自分で旅行プランを立てたことがなかったから私も知らなかったよ。」

「ちょっと僕のスケッチブック持っててもらえる?」

「えっ?」

「君の荷物は僕が持つよ。バッグをこちらへ。」

「いいよ、私、自分で持つから。」

「いいから、いいから。」

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結局、ソウタが大きなバッグを2つ、リサがスケッチブックを二冊持って歩くことになりました。

もと来た道を箱根湯本駅に向けて戻ります。箱根湯本の駅に着くとコインロッカーはすぐに判りました。ソウタは自分の大きなバッグから小さな掛けカバンを取り出しました。デッサンに使う鉛筆や練り消しゴムなどの画材を入れて身に着けました。リサも小さなショルダーバッグに画材を入れて掛けました。2つのバッグが一度に入るほど大きなコインロッカーが空いていたので2つまとめて預け入れることができました。

「君のスケッチブックも僕が持つよ。」

「それはいいわ、スケッチブックは軽いから、私のは自分で持つよ。」

「うん。そうか・・・。それじゃ行きますか?」

「うん。」

「彫刻専門の美術館に行くよ。」

「それ、楽しみにしてたのよ。」

二人は箱根湯本から登山鉄道に乗りました。赤い色の電車で2両編成でした。あじさい電車の愛称で親しまれているようですが、さすがに秋ともなるとあじさいは咲いていません。けれども山の景色は美しく眺めていると飽きません。どんどん山を登っていきます。さすがに登山鉄道の名のとおりです。40分ほど乗ってその美術館のある駅に到着しました。

駅を降りて2分ほど歩くと美術館の入り口になりました。大学生と高校生は大人よりは少し安いようです。学生証を見せてチケットを買いました。その時、ソウタ達の後ろに並んでいた人達の会話が聞こえてきました。それによると、どうやら事前にインターネットのウエブサイトから割引券をダウンロードしてプリントアウトしておいて入り口で見せるとさらに若干割引になったようなのです。ソウタとリサは顔を見合わせてしまいました。

「やっぱり、旅行は事前によく調べておくほうがいろいろと得なんだね。」

「そうね、ちょっと勉強になっちゃったね。ネットってすごいんだね。」

「そうだね。」

館内に入るとそこは屋外で、とても広そうです。

「さあ、どれから見る?」

(つづく)

良い旅を!

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