グアム・デイズ ⑥(旅行 連載小説 短編)

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グアムの警察へ

マナトは自分から「警察に行こう!」と言ってしまった手前「やっぱり行かない!」とはいえない状況になってしまいました。

( なんだかおかしなことになってしまったなあ・・・。)

彼女に片手を引っ張られながら暑い日差しの中を走りました。

そして仕方なく彼女と一緒にタクシーに乗りました。

「警察に行くまでだからね。」

「うん。ありがとう。助かります。」

彼女はさっきの必死の形相とは少し違うおだやかな話し方をしました。

*これ以降、現地の人とは英語で話をしているのですが日本語にしておきますね。

タクシーの運転手さんに

「 警察まで連れて行ってください。」

とお願いしました。

「困りごとかい?」

「ええ、荷物を盗られてしまって・・・。」

「それならGPDだね、グアムの警察はタモンに出張所があってね、そっちの方が近いからそこにしようね。すぐだよ。」

グアム警察はGuam Police Departmentと言います。略してGPDです。

「荷物を無くしたって言ってたけど紙袋もってるじゃん。」

「ええ、この袋にはお買い物したものが入っているの。この袋と小さなショルダーバッグとスーツケースを持っていたんだけど、トイレに行ったときスーツケースを個室の前に置いておいたのね。ショルダーバッグとこの袋は壁のフックにかけておいたの。そしたらスーツケースを誰かが持ち去る音がしたのであわててトイレの外の売り場まで飛び出したんだけどもうどこにも姿が見えなくて、それで戻ったらショルダーバッグが無くなっていて、この袋だけ残っていたので・・・。」

「そうか、たいへんだったんだね。」

「どうしよう、ショルダーバッグにはパスポートも入っていたの。」

「それは困ったね。でもなんとかしなくちゃね。」

「・・・」

「そうだ名前をまだ聞いてなかったね、僕はマナト、千葉から来たんだよ。」

「私はミウと申します。東京からです。」

タモンにある出張所に着きました。マナトがタクシー代を払いました。もちろんチップも。

建物に入ると彼女は事情を説明しました。取られた物をすべて伝えました。

「それはたぶん見つからないと思いますよ。パスポートも無くしたのであれば盗難届受理証明書をあげるから、これを持って在ハガニア日本国総領事館へ行ってください。ポリスレポートが必要ならこれを持って空港近くのグアム警察署へ行って下さい。」

担当の警察官はそう言うと名刺ぐらいの大きさのカードに、担当警察官の氏名と、この事件のケース番号を書いて渡してくれました。

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「それから、ここへ来るのでも良かったんだけど、現場から電話してもらって警察官が駆けつける方法もあるので覚えておいてくださいね。電話が無ければ近くのお店の人に言えば協力してくれることもあるから、」

「はい。ありがとうございました。」

二人は、警察のタモン出張所を出ました。

「あの・・・。」

「はい。」

「領事館までお願いできますか?」

「そうだね、ここで放り出すわけにもいかないもんね。いいよ。」

「ごめんなさいね。マナトさんもご予定がおありだったのでしょうに・・・。」

「いや、いいんだよ。」

タクシーに乗りました。運転手さんが軽い調子で聞きます。

「どこへ行く?」

「在ハガニア日本国総領事館までお願いします。」

「トラブルかい?」

「ええ、私がパスポートを無くしてしまって・・・。」

「そりゃ大変だ、でも大丈夫、再発行できるよ。」

「はい、ありがとうございます。」

「それとグアムの旅行会社が共同で出資して設立した会社があるらしいよ。日本人観光客のためには日本語で対応してくれるから覚えておくといいよ。旅行中の病気やケガ、盗難などのあらゆるトラブルの相談に乗ってくれるんだよ。しかも24時間体制なんだってさ。便利だよね。」

「はい、覚えておきます。」

「それと、グアムを旅行する日本人専用のクリニックもあるらしいよ、日本語で高水準の医療が受けられるって話だぜ。」

「ありがとうございます。」

在ハガニア日本国総領事館に着きました。現地ではConsulate General of Japanと言うそうです。土日祝祭日は休みのようです。建物に入る前にマナトはふと気づいたのでミウに訊きます。

「帰りの飛行機の出発予定はいつ?」

「1時間後です。」

「たぶん間に合わないね。」

「うん。」

「キャンセルできればしたほうがいいね、旅行社の名前わかる?」

「はい。」

「じゃあ電話してみようか?」

マナトはスマートフォンを取り出しました。ネット検索で旅行社の電話番号が判りました。さっそくかけてみます。事情を説明すると、飛行機はキャンセルできましたが旅行が始まってしまっているので旅行費用は返金できないそうでした。ただ、事情を考えて、今回だけ特別に格安で席を取ってくれることになりました。ただし3日ほどかかるとのことでした。

二人で在ハガニア日本国総領事館に入ります。窓口で盗難届受理証明書を見せると次のように教えてくれました。パスポートの再発行には2~3日の時間がかかること、渡航証明書ならすぐに出せること。です。彼女はパスポートの再発行を選びました。

(つづく)

良い旅を!

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