グアム・デイズ ①(旅行 連載小説 短編)

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この連載小説について

今回も実際にはまだ行ったことのないところです。私のグアムへの憧れを連載小説風にしてみました。可能な限りの取材を行って書いていますが、実際には現地を知らない訳ですから突っ込みどころは満載だと思います。実際に現地への旅行を予定している皆様のために、グアムへの旅行経験のあるかたは、ぜひ正しい内容を補足していただけますと幸いです。物語も「想像」で書いています。なのでこちらも無理はいっぱいです。けれども細かいことはあまり気にせず、楽しくお読みいただけますと幸いです。

旅のはじまり

今回の旅人の名前はマナト、千葉で会社勤めをしています。20代も後半になり、そろそろ身を固めるように親には言われています。友人には「モテるでしょ!」と言われますが、本当はそんなにはモテません。今の彼女もやっとできた彼女なのです。夏の休暇に、今つきあっている彼女、サキさんにねだられて一週間のグアム旅行に行くことになりました。ちなみに旅行費用はマナト持ちです。ゆっくり過ごしたかったので旅行社には航空券と宿、そして2日目の島内一日観光だけをお願いしておきました。さてどうなりますか?

出発の日の朝

お昼もだいぶ過ぎたころ、ゆっくり支度をします。白いロングTシャツにサーモンピンクのビッグTシャツ、黒色のスキニー、黒色のキャンバスシューズ、黒のリングネックレスに腕時計を身に着けました。機内に持ち込むことのできる小さなスーツケースを持ち出かけます。今回の旅行先はグアム。一週間の予定なので彼女とゆっくり過ごせそうです。成田出発です、夜の便です。

交通は順調で成田には予定よりも早く着きました。出発ロビーで彼女を待ちます。

約束した時間になりましたが彼女はまだ現れません。「どうしたのかな?」と少し不安になります。

出発2時間前になりました。さすがに不安に思い電話してみます。

「もしもしサキさん?」

「何?」

「マナトです・・・。もう出発の時間だけど、今どこ?」

「今、家だよ。」

けだるそうに答えてきます。

「えっ?飛行機、間に合わないよ。」

「平気だよ、今日は行かないから。」

「えっ?どうしたの?具合でも悪いの?」

「そうじゃないの。新しい彼氏ができたのよ、すっごいお金持ち。」

「えっ?・・・」

絶句してしまいます。

「まさか私を自分の彼女だとか思ってる訳じゃないでしょ。軽い遊びなんだから。」

「遊び?」

「そう、だから迷惑なのよ彼氏面されると・・・。そういうわけだから、もう電話もメールもしてこないでよね。」

電話は切れてしまいました。

マナトは呆然としてしまいます。驚きのほうが悲しみより大きく、立ち尽くしてしまいました。振られたということだから「失恋した」わけで、そのことがしばらく頭をぐるぐる回っていました。

やがてすこしだけ気持ちが落ち着いてきたころ、大事なことに気が付きました。

( 彼女が旅行に行かないとなると彼女の分の旅行代金はどうなるの?  そうだ、確か当日のキャンセル料は飛行機出発前なら旅行代金の50%だったような気がする・・・。)

あわてて旅行会社に連絡することにしました。とりあえず彼女の分をキャンセルしました。被害を最小限にすることができました。

そして通話が終わってふと思いました。

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( 僕の分はキャンセルしなくていいのか? それとも一人で旅行に行くのか? 振られた僕が一人きりでグアムに行くのか? )

しかし、このまま日本にいても更に落ちこむだけだと思われました。いろいろ考えた末、一人でも行くことにしました。

搭乗の手続きだけしました。荷物はスーツケ-スだけれど機内に持ち込める小さいサイズなので機内預けはせずにそのまま保安検査場に持って行きました。税関、出国審査とすすみ、制限エリアに入りました。

一人で搭乗口の待合ベンチに腰掛けます。

何を考えるでもなく、抜け殻のようにそこに座り続けました。

まわりにはだんだんと同じ便に乗る人たちが増えてきました。

搭乗が始まりほとんどの乗客が搭乗し終わりました。搭乗口の待合ロビーには静けさがもどってきました。

それでもボーっとしているマナトに航空会社の地上係員さんが声をかけました。

「お客様? お客様? お乗りになられますか?」

マナトはふっと我に返りました。

「あっ、ええ、乗ります・・・。」

「それではご案内いたしますのでこちらへどうぞ!」

搭乗券を渡しました。

「お体の具合がお悪いのですか?」

「いえ、そうではありません。」

「それならいいんですけれど・・・。」

半券を渡してくれました。

「ご利用ありがとうございます。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

「どうもありがとう・・・。」

飛行機の中は若干の空席がありましたが、かなり席が埋まっています。自分の席を見つけて座りました。スーツケースを入れる頭上にあるフタの閉まる荷物入れの棚はどこも満杯で入れることができません。客室乗務員さんを呼び、預かってもらえるか聞いてみることにしました。客室乗務員さんはマナトがしたのと同じように周囲3m以内くらいの荷物入れの棚をパタパタと開け閉めして空間を探してくれましたが、やはり満杯でスーツケースを入れることができません。客室乗務員さんは言いました。

「お荷物は前のお座席の下に置いてください。」

「はい。」

マナトは素直にスーツケースを足元に置きました。少しだけ窮屈になりました。隣の席は空いたままなので、サキさんがそこにいない現実を思い知らされるような思いがしました。

こうしてマナトはグアムへ飛ぶ飛行機に一人で搭乗したのです。

やがて飛行機は離陸していきます。

グアムまでは3時間45分ほどの飛行時間です。比較的近いので短い日程のツアーも多くて、気軽に行ける身近な外国という感じです。そのため若いカップルも多く、マナトにはちょっと辛い環境になっています。

そのような中、マナトはサキさんと出会ってから今日までのことを振り返っていました。ああすればよかったのかな?とかこうすればよかったのかな?とか自分の至らなかったところを反省してみたりもしたのですが、もうどうにも後の祭りという感じです。それにそんなに自分が間違っていたわけでもないのではないか?とも思ってみたりもしました。いずれにしてもこの現実は変わりません。

(傷心の旅ってか?いいさ、男の一人旅ってやつをやってやるさ!)

少し開き直ってきました。小さいスーツケースからガイドブックを取り出しました。

(つづく)

良い旅を!

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